「なんでそんな言い方されなきゃ、ならないの?」
「何度言ったらわかるんだ!」
仕事をしているとコミュニケーションがうまくいかず、上司や同僚、部下に対してイライラする時もありますよね。「イライラせずに冷静に接しなければ」と頭でわかっていても、なかなか怒りの感情は離れてくれないものです。
そこで身につけておきたいのが怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」。
この記事ではアンガーマネジメントの意味とビジネスにおける必要性を紹介します。簡単にアンガーマネジメントを身につける方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントとは「怒りの感情をコントロールすること」です。もともとは認知行動療法の技法の一つ。
衝動的な言動や行動を抑制し、その場にふさわしい感情表現を行うことで適切な問題解決やコミュニケーションができるようになるために用いられてきました。
アンガーマネジメントができていない人はいわゆる「キレやすい」人。ストレスを抱え込んだ結果、自分の感情をコントロールできず周囲の人や物に八つ当たりしてしまうのです。
アンガーマネジメントと聞くと怒らないようにする方法のように思えますが、そうではありません。アンガーマネジメントの目標は「怒るべきときは怒る」「怒らない必要がなければ怒らない」と怒りに対して適切な態度をとること。
例えば無断で遅刻をした部下を指導するのは上司の責務。しかし頭ごなしに怒鳴っては部下のモチベーションを低下させるだけでなく職場の雰囲気も悪くなります。アンガーマネジメントをして冷静に指導することで、モチベーションを下げずに部下の反省を促し、その後の仕事に励むようにできるのです。
またアンガーマネジメントは職場におけるコミュニケーションを円滑にするだけでなく、社員1人1人のストレス対策としても注目されています。
その理由の1つが「価値観の多様化」。それぞれの価値観が尊重される今、自分と価値観の異なる人に対応できず、苛立ち、人間関係のトラブルへと発展してしまうこともあります。アンガーマネジメントができれば苛立ちをコントロールできるのでそのトラブルを回避できるようになるのです。
またアンガーマネジメントをしていないとパワハラになることも。教育の一環と思っても感情むき出しに部下を指導するとパワハラとみなされてしまう可能性があるのです。
【パワハラ対策】次はあなたの番です!?職場でのパワハラは事前に防げる
アンガーマネジメントの効果
アンガーマネジメントには次のような効果があると言われています。
人間関係の悪化を回避できる
怒りをそのまま相手にぶつけてしまうと、それまでの人間関係が壊れてしまうこともありますよね。アンガーマネジメントができれば、自身の怒りに対して冷静に対処できるようになり、人間関係を悪化させるリスクが減らせるのです。
感情をぶつけてもすっきりすることはなく、ただ相手を萎縮させるだけ。どれだけ伝えたいことがあっても、感情的な発言になってしまえばそれは相手にとって理解しづらいものになり、上手くは伝わりません。
アンガーマネジメントで感情をコントロールすることで、冷静に意見を伝えることができ、どんな時でも今まで通りの関係性を保てるようになるのです。
コミュニケーションスキルが上がる
アンガーマネジメントをすることで傾聴できるようになります。傾聴はコミュニケーションスキルの1つ。相手の話に相づちを打ちながらひたすら聞く姿勢を示すことで、相手に安心感を与えます。
相手の発言にイライラしていると内容を正しく聞き取れません。怒りの気持ちで心がいっぱいになってしまい、冷静に考える余裕がなくなるからです。
どんな発言にも感情をコントロールできれば正しく内容を聞き取れます。相手の話に適切な判断し、自分の意見を伝えられるでしょう。アンガーマネジメントによって今までより円滑なコミュニケーションが実現するのです。
仕事の生産性が上がる
アンガーマネジメントにより感情をコントロールすることで、いつでも冷静に仕事に向かえるため生産性がアップします。
上司の指示や取引先の人の話に苛立ち、心が乱れてしまうと仕事も手につきませんね。仕事の優先順位もつけられず、思わぬミスをしてしまうかも知れません。
効率よく仕事を進めるには感情のコントロールが重要なのです。
価値観の多様性を理解できるようになる
アンガーマネジメントによって価値観の違いも認めやすくなります。
価値観の異なる人と上手な人間関係を築くことは簡単なことではありません。苛立ちは自分と他人との思考・価値観のずれから生まれるもの。
アンガーマネジメントをすれば、苛立ちに邪魔されることなく、素直に他人の価値観の違いを受け入れられるようになるのです。アンガーマネジメントで心に余裕ができ、異なる価値観への戸惑いも最小限に抑えられるでしょう。
人それぞれの価値観を認め、自分と違う価値観に出会ってもストレスフリーでいられるのです。
アンガーマネジメントをするために自分の怒りのタイプを知ろう!
アンガーマネジメントをするにはまず「怒り」を知ることが必要。
「怒り」は「自分を守るための感情」と言われています。不安や悲しみなどが心に溜まった結果、これ以上自分が傷つかないために怒りとして表に出すのです。
相手を傷つけようと怒る訳ではありません。弱い自分を守ろうと必死な状態なのです。
怒りが表に出やすいタイミング(=「着火ポイント」)は人それぞれ。かなり溜まってから着火する人もいれば、すぐ着火する人もいるでしょう。「どんなことが着火剤になりやすいか」によって、一般的に6つに分類されると言われています。
・公明正大
・博学多才
・威風堂々
・外柔内剛
・用心堅固
・天真爛漫
自分の怒りのタイプを知ることで自分に合った アンガーマネジメントが分かるのです。
自分の怒りのタイプは、日本アンガーマネジメント協会『無料アンガーマネジメント診断』で知ることができるので、ぜひやってみてください。
ここでは怒りのタイプ6つについて解説します。
「公明正大」
正義や信念をしっかり持ち、自分が信じることに突き進むタイプ。
怒りのポイントは「ルール違反」や「マナー違反」。自分が発言する立場になくても常に正そうと介入してしまう傾向があります。
自分が信じている正義や信念が通じないと自分を否定されている気分になり、怒りにかわるのです。
「博学多才」
向上心があり、完璧を求め、何事にも白黒つけたがるタイプ。
「優柔不断」や「適当な行動」に怒りを感じます。自分の意見をはっきり発言しない人に苛立つことが多く、自分と価値観が異なる人をなかなか受け入れられません。
完璧ではない人を認めてしまうと完璧を求める自分がダメな人間だと言われているような気がするのでしょう。自分をダメな人間にしないように怒るのです。
「威風堂々」
プライドが高く、いつでも堂々としているように見えて実は他者承認を気にするタイプ。
怒りのポイントは「他者からのネガティブな評価」と「思い通りにならないこと」。自分は人から尊敬されて当たり前と思っているので、アドバイスでも批判と受け止め、攻撃的になることもあるでしょう。
また自分の思い通りにならないと威圧的な態度になる傾向があります。理想の自分と異なる現実の自分を見るのが怖いので怒ってしまうのです。
「外柔内剛」
穏やかに見えて実は頑固な人。
「自分と異なった価値観」や「自分の意志に反すること」に怒りを感じます。主張しないので頼みやすいと思われ、仕事を押し付けられることも。
自分の意志そぐわない仕事でも持ち前の責任感を活かし問題なく済ませますが、実は心の内では怒りの感情が満ちています。 自己主張をしないのは衝突して傷つくのを避けるため。
怒りを覚えても、人に相談せずストレスを内にため込んでしまうタイプです。
「用心堅固」
周りを常に警戒し、慎重に行動するタイプ。
自分が攻撃され傷つくことを恐れているので「自分の世界に侵入される」と怒りを感じます。
人間関係を悪化させないように常に気を配っているので誰とでも付き合える半面、「この人はこうだから」と固定観念を持ちやすいでしょう。
「天真爛漫」
自分の意見や気持ちを素直に表現できる人。
怒りのポイントは「思い通りにならないこと」と「自分と異なった価値観」。手のことを想像するのは苦手なので、自分の思い通りにならないとイライラしてしまいます。
自分の好きなように行動できなくてストレスが溜まることもあるでしょう。
アンガーマネジメントの実践方法
アンガーマネジメントを身につける方法を5つ紹介します。
認知行動療法の技法にはさまざまなものがありますが、その中でビジネスにおいても有効、かつ、簡単に取り入れられるものを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
6秒ルールを実施する
反射的に怒りを言葉や行動に出すと、大きなトラブルになりかねません。怒りを感じたら何もせずまず「6秒」待ちましょう。6秒あれば怒りがコントロールしやすい状態になります。
・「1、2、…、6」と数える
・鼻から息を吸いながら「1、2、3」、口から細く息を吐きながら「1、2、3」
・周囲の人を6人数える
このようにやり方はいくつかあります。怒りを感じたらまずは6秒、自分に合った方法で耐えることが大切です。
その場から離れ、一晩寝かす
6秒では収まらない程の怒りもあるでしょう。それでも感情のままに行動してはいけません。とりあえずその場から離れましょう。その場から離れることで直接相手に感情をぶつけずに済みます。
トイレを利用するのが最も簡単な方法ですが、怒りの大きさによっては階段で階上まで行っても良いかもしれません。歩いてふくらはぎを刺激し、脳に新鮮な空気を送りましょう。
またその日中には収まらない怒りもあるはず。そんな日は怒りの感情を無理に抑え込もうとしなくもOK。
「怒ってはいけない」と言い聞かせてしまうとかえって怒りに向き合ってしまい、もともとの原因に加えて怒りが収まらない自分に対する苛立ちも発生してしまいます。極力、相手と顔を合わせないようにしながら、他のことに意識を向けて過ごしましょう。
一晩寝かせて次の日になれば怒りの感情は自然と小さくなり、冷静な判断がしやすくなっているはず。「時間くすり」はアンガーマネジメントにも有効なのです。
着火ポイントを認める
怒りの着火ポイントを認めると怒りをコントロールしやすくなります。
プライドが高い人はなかなか自分のことをプライドが高いと認めにくいもの。しかし認めないと怒りの原因にいつまでもたどり着きません。
例えば、人に批判されてイライラしているとき「実は自分はみんなから尊敬されたいと思っている」という事実に真っ向から向き合ってこそ、怒りをコントロールできるようになるのです。
着火ポイントは自分の短所と思っていることが多いため目を背けたくなりますが、そこに目を向けることでアンガーマネジメントは始まると考えましょう。
無駄なプライドを捨てたい!もっと楽に生きたい!!プライドが高い人の特徴・原因・改善方法
スコアをつける
怒りをコントロールするには自分を客観視する必要があります。そこでおすすめなのが、怒りにスコアをつけること。
しかし、感情のど真ん中にいると周りは何も目に入らずコントロール不能。そこで最初は怒りが収まってからスコアを考えましょう。
人生最大の怒りを10点、心が穏やかな状態を0点として先ほどの怒りは何点か考えます。「人生最大の怒りに比べれば今のは2点くらいか」と思うと「あんなに怒るんじゃなかった」と反省することもあるでしょう。
習慣化されれば怒りが表に出る前に客観視できるようになり、アンガーマネジメント成功です。
怒りの原因を追求し過ぎない
アンガーマネジメントに頼り過ぎるとストレスが大きくなるので、怒りの原因を解明しようと頑張り過ぎないことも大切。
完璧な人間などいません。頭では分かっていても抑えられない感情は誰にでもあります。全ての感情が説明できるわけではないのです。
なんでイライラしているのか、その原因がわからなくても当たり前。ただ「自分はイライラしている」と現状を素直に認めましょう。
否定することなく苛立つ自分をそのまま認めることで、それ以上心が傷つかないので苛立ちは収まっていくはずです。