急激な社会情勢の変化により、テレワークなどの新しいワークスタイルが定着しつつある昨今。
「もっと自分らしい働き方を模索したい」
「今のままでいいのかな。もっと自由な働き方ができるのではないだろうか」
こんな風に、自分のワークスタイルを見直し始めた人も多いのではないでしょうか。
今回は、新時代の働き方として注目を集める「ワーケーション」について紹介します。メリット・デメリットの両面やおすすめのワーケーションスポットを解説するので、自分に合うかどうかを見極めるヒントとしてぜひ活用してください。
目次
ワーケーションとは
ワーケーション【WORKATION】とは、「働く」という意味の【work】と「休暇」という意味の【vacation】を掛け合わせて生まれた言葉。通常の勤務地を離れ、リゾート地や旅先でテレワークをする働き方を意味します。
ワーケーションの主体は「休暇」であり、バケーションを満喫しながら働くという新しい考え方です。そのため、仕事時間以外は、現地の美味しい料理に舌鼓を打ったり、ゆっくりと景色を眺めたり。そんな時間の使い方を楽しめます。
「ワーケーション」という言葉・概念は徐々に浸透しつつあるものの、「仕事は仕事」「休暇は休暇」とはっきり線引きをする傾向の強い日本では、まだまだ馴染みがない人が多いかもしれません。
ワーケーションが注目されている背景
ワーケーションは、地方経済の活性化や人口の分散をねらいとしており、政府や地方自治体の積極的に推進によって注目を浴びるようになりました。
2019年7月に和歌山県・長野県を中心とした国内の複数の自治体によって「ワーケーション・アライアンス・ジャパン(ワーケーション自治体協議会)」が発足し、ワーケーションの浸透への動きが盛んに。「ワーケーション・アライアンス・ジャパン(ワーケーション自治体協議会)」は、ワーケーションのさらなる拡大を目的に、地方自治体がより連携を深めるための組織です。
さらに、2020年7月には菅義偉内閣官房長官(当時)が「観光戦略実行推進会議」でワーケーションについて発言。さらなる認知拡大につながりました。現在は環境省や観光庁が旗を振り、国内のワーケーション環境の整備を進めているところです。
ワーケーションのメリット
ワーケーションに対して、なんとなく「楽しそう」「旅行しながら仕事ができる」というぼんやりとしたイメージを抱いている人も多いでしょう。具体的には、どんなメリットがあるのでしょうか。
日々のモチベーションの向上に繋がる
ワーケーションを利用していつもと違う環境で仕事をすることで、リフレッシュ効果が期待できます。
自然豊かな景色の中で業務に取り組んだり、休憩時間を利用してその土地の名産品を食べたり、仕事終わりにはホテルでゆっくりと過ごしたり。「この仕事が終わったら、ひと泳ぎしてくるぞ!」など、普通では考えられないような楽しみを味わえるのがワーケーションの醍醐味です。
こんな非日常体験が、人生・生活・仕事に対する新鮮な気持ちを呼び起こし、マンネリ化を解消してくれます。
気持ちをリセットできれば、新たなアイディアの創出にもつながり、それがモチベーションの向上に繋がるでしょう。
長期休暇を取得しやすくなる
日本ではまだまだ長期休暇を取りづらい雰囲気が漂っていますよね。仕事に穴を空けてしまうことを考えたら、長期休暇を取りたくても積極的になれないという人がほとんどではないでしょうか。
旅先でも仕事ができるワーケーションであれば「休む」と「働く」が同時にできるため、「休暇から戻ったらその分止まっている業務を取り戻さなきゃ」「周りに挨拶しなきゃ」と罪悪感を抱きながら旅行する必要はありません。TV会議システムの活用によって、ワーケーション先からでもミーティングに参加できます。
さらにワーケーションと有給休暇を上手に組み合わせれば、これまで二の足を踏んでいた長旅だって実現できるのです。
生産性が上がる
オフィスワークでは、ちょっとしたことで呼び止められる、ひっきりなしに電話が鳴るといった、仕事の進行を妨げる要因が山のようにあります。
リモートワークのメリットとも重なりますが、ワーケーションで1人になれる場所で業務に取り組むことで仕事を妨げる障害が減るため、生産性の向上が期待できるのです。
目に飛び込んでくる景色がいつもと全く違うため、インスピレーションを刺激され、これまでは思い浮かばなかったようなアイディアが湧いてくる場合もあるでしょう。
また、「何時から何時までは仕事、そのあとは休暇を楽しむ」としっかり時間を区切れば、時間内で業務を終わらせる意識も上がります。オフィスでだらだらと残業するよりも効率的に仕事に取り組めるでしょう。
ワーケーションのデメリット
ワーケーションには多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。対策を練るため、あらかじめ把握しておきましょう。
切り替えが難しい
これまでの働き方の関係もあり、日本人は仕事と休暇を分けて考える人がほとんど。そのため、「休暇を満喫しながら働く」ワーケーションの概念になかなか馴染めないケースが多いでしょう。
休暇先にいながら日常の業務をこなすことに違和感を覚えたり、「結局、働いているのか休んでいるのかわからなかった」というモヤモヤを抱えてしまったりする恐れもあります。周囲から「遊んでるだけで仕事してないんじゃないの?」と疑われることもあるでしょう。
そのため、「業務の時間を決めてそれ以外はPCもスマホも触らない」とルールを決めるなど、自己管理能力が問われます。
仕事環境を整えるのが難しい
ワーケーションを実現するには、企業の積極的なサポートが必須です。遠隔でも会議に参加ができるシステムや勤怠の管理、さらには周囲の理解など、オフィスにいなくても快適に働ける環境作りが求められます。
また、働く本人がテレワーク慣れしている必要もあります。ワーケーションに来たものの、遠隔での働き方に戸惑いを感じてしまっては本末転倒です。
Wi-fiが整備されていないエリアや通信速度が遅いホテルだと、オフィスと同じスピード感で業務ができない場合もあるのも現状の課題。しかし国や自治体の取り組みにより、今後はワーケーションに最適なエリア・施設が増えていくことが予想されます。
セキュリティへの懸念が生じる
オフィス以外の場所で仕事をする上で懸念されるのが、セキュリティの問題です。PCやタブレットなどの業務に使用するデバイスの安全管理や、旅先のネット環境の安全性を視野に入れなければなりません。
企業として、セキュリティ対策のガイドラインを設けるのはもちろん必須ですが、ワーケーションを利用する社員にもセキュリティに対する意識の高さが求められます。
また、個人情報を扱う部門の仕事であれば、「旅先のカフェでちょっと一仕事」も難しいのが現状です。同じ会社内でも、部門・部署によってワーケーションのできるできないが分かれるのは、不平等感が拭えないでしょう。
おすすめの国内ワーケーションスポット
まだまだ未知な印象の強いワーケーションですが、すでに人気を集めているエリアや、自治体が積極的に誘致しているエリアもあります。ここでは、国内でおすすめのスポットを厳選してお届けします。
北海道
北海道は、ワーケーションに対して積極的なエリアのひとつ。道内には、ワーケーションに適した宿泊施設やスペースが充実しているのが特徴です。
北海道では、スケールを活かした周遊型のワーケーションプラン「北海道型ワーケーション」を推進しています。エリアごとに農村で過ごしたり、動物と触れ合ったりできるプランが用意されているため、働きながら北海道の自然を満喫できます。
夏は涼しく、冬は厳しい寒さの代わりに幻想的な景色を楽しめるところが嬉しいポイント。特に、ウィンタースポーツをたしなむ人にとっては魅力的なエリアではないでしょうか。
東京
リゾート地や観光名所で働くことだけがワーケーションではありません。都心でちょっとした非日常を味わいたい人には、東京でのワーケーションがおすすめです。
例えば、近場の少し贅沢なホテルに滞在し、静かな環境で仕事をするといった楽しみ方もできます。
地方に住んでいる人にも東京でのワーケーションはおすすめ。東京は交通網も発達していて動きやすいですし、多彩なイベントが開催されているので、刺激を得られてアイデアが溢れるかもしれません。
既にワーケーション向けの宿泊プランを用意しているホテルも多数。Wi-fi環境に心配がいらないのも都会ならではのメリットとして挙げられます。仕事の合間に、ホテルのスパやプールでリラックスというのはいかがでしょうか。
鎌倉
都心からのアクセスの良さが魅力的なのが、鎌倉や葉山などの湘南エリア。海を望めるホテルも多数あるので、近場でリフレッシュしたい人にぴったりです。
朝の時間にサーフィンを楽しんだり、湘南のサンセットを眺めながら仕事をしたり。ゆったりとした空気感の中で、普段より生産性も上がりそうですね。
寺社などの観光スポットが多いことから、家族と一緒に滞在するのもおすすめの楽しみ方です。気軽に訪れられるワーケーションスポットとして、今後はさらに人気が高まるでしょう。
千葉
鎌倉と同様に首都圏からのアクセスが良い千葉県も、人気のワーケーションスポットです。
特に、県の南部にある南房総市はワーケーションの推進に対して積極的なエリア。都内からわずか1時間半という立地ながら、海の見える自然豊かなロケーションを楽しめます。
市を挙げて誘致に取り組んでおり、ワーケーションや2拠点生活に適したさまざまな施設や滞在プランを用意されているのもポイント。ワークスペースやWi-fiなどの環境が整えられた宿泊施設が充実しているので、初めてのワーケーションでも快適に過ごせるでしょう。
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長野
長野県は、ワーケーションの推進に積極的なエリアのひとつです。県を挙げて誘致に取り組んでおり、茅野市、駒ヶ根市、白馬村、立科町、奥志賀高原などのエリアでは、宿泊施設やワークスペースといった仕事に必要な環境が整っています。
関東圏から足を運びやすく、夏の爽快な気候、冬の風情あふれる雪景色のどちらも人気。自然の恵みを肌で感じながら、いつもと違った気分で仕事に向きたい人にとっては、これ以上ない魅力的な場所でしょう。
和歌山
和歌山県は、西日本有数のワーケーションスポットです。「ワーケーション・アライアンス・ジャパン」発足の中心的な県だったこともあり、働くと遊ぶを両立させるさまざまな設備が整っています。
中でも、美しい海が自慢の白浜町は人気の高いエリアです。有名企業がサテライトオフィスを開設した事例もあります。さらに、県独自のワーケーションプランを用意するなど、話題に事欠きません。マリンスポーツや海の幸などを満喫しながら、のんびりと仕事をしたい人におすすめの場所です。
まとめ
新しい働き方として、今後ワーケーションの導入に取り組む企業はさらに増えると予想されます。転職する際に、ワーケーションなどのフレキシブルな働き方ができることを条件にするのも良いでしょう。
今回ご紹介したエリアは、快適なワーケーションを叶えやすいところを厳選しています。まずは実験的に、これらのスポットに足を運んでみてはいかがでしょうか。
いつもと違った場所に身を置き、休暇と仕事を両立させるという新しい働き方を体験してみてください。