レジリエンスとは、変化の激しいビジネス環境の中でストレスに柔軟に適応し生き抜く力。
近年労働環境の悪化・働き方改革・経済のグローバル化などにより、ビジネス環境はより複雑化していますよね。それらの環境の変化に適応できる力として注目を集めているのがレジリエンスなのです。
「変化に柔軟に適応できるようになりたい」
「ストレスに負けない強い心が欲しい」
「レジリエンスってどうやって鍛えたらいいの?」
このようにレジリエンスを身につけたいと考えている人は多いはず。知っておくと得するレジリエンスの意味とその鍛え方について解説していきます。
目次
レジリエンスとは
まずはレジリエンスとは何か、そしてレジリエンスが近年注目されている背景について、詳しく解説していきます。
レジリエンスとは
「レジリエンス(resilience)」とは、反発性、弾力性、回復力、復元力という意味を持つ言葉です。
物理学の世界で生まれた言葉で、外からの圧力をはね返す力や環境適応力を意味します。同じく物理学の専門用語で日常でよく使われている言葉に「ストレス(stress)」がありますよね。
・ストレス(stress):外力による歪み
・レジリエンス(resilience):外力による歪みをはね返す力
元来レジリエンスは物理学の分野で使用されていた言葉でしたが、個人や組織がさまざまな環境、状況に対して、うまく適応できる能力、生き延びる力として広く使われるようになりました。
そのきっかけとなったのが、ナチス・ドイツによるユダヤ人の大虐殺により孤児になった子どもたちの追跡調査だと言われています。
その調査によって元孤児の中には、過去のトラウマや恐怖の記憶から立ち直れず、生きる気力を見出せずに不幸な人生を送っている人たちがいる一方で、トラウマを乗り越え仕事に就き、幸せに生きている人たちもいることが判明。
さらに調査を進めていくと、つらい過去を乗り越えた人たちは困難な状況に圧し潰されることなく、逆境や困難に負けず、環境に適応し、生き抜く回復力を持っていることがわかりました。
この「逆境や困難に負けず、環境に適応し、生き抜く回復力」こそまさにレジリエンスなのです。
レジリエンスがなぜ注目されているのか
近年、レジリエンスが注目されている大きな理由に労働環境の変化が挙げられます。
人生100年時代と言われ、終身雇用・年功序列は崩壊し、評価制度も成果主義へと移行している現代。また、どんな企業に属していても、突然のビジネス縮小や削減に追い込まれることもあり、多くの人は不安を抱えながら働いています。
そして以前より生き方の選択肢が広がり、より自分の強みを活かした働き方を選べる反面、変化に伴うストレスとは常に隣り合わせです。
このような状況では、ストレスから回避して生活することは現実的ではありません。「ストレスは常に存在するものと受け止め、ストレスにどう立ち向かっていくか」というのが重要になります。
そこでこれらのストレスに負けずに跳ね返って回復できる力、レジリエンスが注目されているのです。
レジリエンスを身につけるメリット
では、レジリエンスを身につけることでどのようなメリットがあるのか、具体的に紹介していきます。
ストレスがたまりにくい
ストレスを避けることはできなくてもはねのける力があれば、ストレスが蓄積されることはありません。
困難や逆境にぶつかってもその都度消化することができれば、ストレスのない状態でいることができるのです。
感情のコントロールができる
困難や逆境にぶつかっても、レジリエンスを鍛えておくことで大きく落ち込むことがなくなります。レジリエンスとは、ストレスをはねのける力。
ストレスに自分の感情に振り回されずに心が安定するようになるのです。
人間関係が良好になる
レジリエンスを身につけると、人間関係によるストレスに気を病むことが減ります。自分に自信を持って行動できるようになり、心に余裕が生まれ周りの人としっかり向き合うことができるようになるのです。
またその心の余裕から周囲の人を信頼し助けを求めることができるようにもなるでしょう。
前向きな気持ちで人と接して信頼関係を築くことができるため、人間関係は良好になります。
自己肯定感が高まる
失敗したり逆境にぶつかったりしてもレジリエンスを鍛えておくことで、不必要に自分を責めることをせず冷静に状況を判断できます。
外部からの圧力に負けず、そのままの自分で良いと受け入れることができるため、自己肯定感が高い状態を保てるのです。
様々な挑戦ができる
たとえ困難な状況であっても、失敗をしたとしても、レジリエンスを身に付けておくことで「自分はきっと乗り越えて成長できるはずだ」とポジティブに捉えることができます。
そのため、困難や失敗を恐れずに様々なことに挑戦することができるのです。
パフォーマンスが向上する
レジリエンスを身につけることで、ストレスに阻まれることなく、目的に向かって集中して取り組むことができます。
それにより個人のパフォーマンスは上がり、属している組織内のパフォーマンスが上がることも期待できるでしょう。
レジリエンスの鍛え方
では、どのようにしたらレジリエンスを身につけ、鍛えることができるのでしょうか?すぐに実践できるよう具体的な方法を紹介します。
自分の思考の癖を知る
まず、自分に偏った思考がないか振り返ってみましょう。
「また間違えたらどうしよう」
「きっと失敗するに違いない…」
「どうせ自分が悪いんだ」
このような困難にぶつかった時の思考パターンを振り返ってみるのです。ネガティブな思考や完璧主義な思考があると、それがストレスの原因になっていることがあります。
・悪いことを拡大解釈してないか
・他人の問題を自分の問題とすり替えていないか
・思い込みで結論を出していないか
立ち止まって振り返ってみましょう。このように思考の癖に気付くことが、自分の思考パターンを変える第一歩。ストレスの原因であるネガティブな思考をはねのけることで、困難に立ち向かえるようになるのです。
ABCDE理論を活用し、ポジティブに考える
自分の感情をコントロールするために有効な考え方として「ABCDE理論」があります。ABCDE理論とは、目の前の状況は、自分の考え方一つで良いものにも悪いものにもなるという前提で物事を捉える心理療法。
思考パターンを「否定的なもの」から「肯定的なもの」に変換することで、自分の感情をネガティブな状態からポジティブな状態へとコントロールできるようになるのです。
A(Activating Event)
出来事
B(Belief)
出来事に対する考え方・受け止め方
C(Consequence)
生じる感情、それに伴う行動
D(Dispute)
Bに対する反論・論理的否定、自問自答
E(Effective New Belief)
Dによってもたらされる効果的信念
何か出来事が起きた時、Bで否定的に受け取ってしまうと、それに伴ってCの感情や行動も否定的なものになってしまいます。それをDの自問自答で自分の思考を振り返り、ポジティブな思考へ方向転換するのです。
このようにABCDE理論で自分の思考を振り返るようにすると、自身の感情がコントロールできるようになり、よりロジカルに冷静に物事を判断できるようになります。
【ABCDE理論で考える例】
A :出来事
上司に難しい課題を任された
B :受け止め方
ネガティブで否定的
C :感情
「できなかったらどうしよう…」
D :反論
「いや、もしできたらできるかも」
「やってみるまで分からないじゃないか」
E :効果的信念
「まずはやってみるようにしよう!もし失敗しても次に頑張ればいいし!何事も挑戦だ!」
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自分の成功体験を書き出す
自分の成功体験を書き出してみましょう。どんな小さなことでも良いのです。どのような成功だったのか、その時どのように考え、どのように行動したのかも含めて振り返ってみましょう。
自分自身に「出来る自分」を見せてあげるのです。
そうして「自分はできた」「自分はきっと大丈夫」と思えるようになることで、否定的な感情をポジティブ思考に変換でき、困難や逆境に前向きに立ち向かうことができるでしょう。
自分の強みを把握する
自分の強みを再認識しましょう。強みがわかると「自分は価値のある人間なんだ」と前向きな気持ちになり、自信が持てるようになります。
そうなると、困難や逆境に対しても「きっと乗り越えられる」と思えるようになるのです。
同時にその強みを発揮できた場面を思い出すと尚良いでしょう。
自分で十分に強みを思い出せない時は、家族や友人など近しい人に聞いてみるのも良い方法です。客観的に自分の長所を言ってもらえることで、気づかなかった自分の強みを発見できたり、長所を再認識できたりします。
まとめ
これからの時代、さらに労働環境は変化し、グローバル化も進みます。そのような環境の中で変化やストレスを避けて生きていくことはより難しくなるはず。
そこでレジリエンスを身につけることで、しなやかにストレスを跳ね返し変化や逆境を楽しみながら楽に生きられるようになるのです。
また、レジリエンスを身につけ、困難や逆境も楽しみ、意味のあるものにできるようになることで、より人生を充実させられるようにもなるでしょう。
レジリエンスは後天的に身につけることが可能です。ぜひ紹介したポイントを参考にできることから実践してみてください。