ビジネスメールに日報、企画書・・・仕事をしているとどうしても文章を書く場面がありますよね。
「文章を書くのが辛い」
「伝えたいことが上手くまとめられない。サラサラ書けるようになりたい」
しかし、このように文章力がないことを悩む人は多いのではないでしょうか。文章力=地頭の良さと諦めている人もいるかもしれません。
「よろしくお願いいたします」で全てを済ませてしまうように、日本人は雰囲気で相手に察してもらうコミュニケーションが得意。
しかしオンラインでのコミュニケーションが増えた今、対面では有効だった雰囲気に頼れない場面も多く、円滑なコミュニケーションのための文章力はより重視されてもいます。
この記事ではビジネスにおける文章力について詳しく解説、鍛える方法も紹介します。
文章力を鍛えるのは難しくなく、日頃の業務に簡単に取り入れられるトレーニングばかりです。文章力が上がれば、仕事の成果も上がります。ぜひ参考にしてみてください。
目次
文章力とは、文章で意見や思いを正確に表現する力
ビジネスにおいての文章力とは「自分の意見や思いを文章で相手に正確に表現する力」のこと。どんなに素敵な文章でも、ターゲットに意図した内容が伝わらなければビジネスシーンにおいては全く意味がありません。
ビジネスにおいて「正確に表現する」とは「意図した通りに相手が解釈するように表現する」ことなのです。
文章力がないと「自分は頭が悪いのか」と悩む人もいるかもしれませんが、それは誤解です。「文章力=地頭の良さ」ではありません。文章力は後天的に鍛えることができる力です。
文章力に必要な4つの要素
文章力に必要な要素は4つ。
・準備する力
・想像力
・語彙力
・表現力
何より大切なのは「準備する力」。書けないと悩む人は、特にこの準備する力が不足しているかもしれません。準備とは頭の中にある情報や考えを整理すること。
例えば仕事の日報を書くとき「今日は〇〇な1日でした」とすぐに書ける人は準備のできている人。「特に何もない日でした」と書く人は今日1日をぼんやりと過ごしてしまったからかもしれませんね。
すぐに書ける人は自分の1日の仕事の内容が把握できています。文章力がある人は頭にある情報をすばやく整理でき、書く準備を整えられるのです。
次に必要なのが「想像力」。ビジネスにおける文章は自分の意図したとおりに相手に解釈してもらうことが大切。
そのため相手の情報量や知識といった前提条件、背景などを想像し、相手が解釈しやすいような文章を書く必要があるのです。
相手の立場を想像して書いた文章は読み手にとって親近感が湧き、分かりやすく身近に感じます。例えば上司に提出した報告書が上司が望む通り書けていれば予想通りの指示を上司は出すかもしれません。
意図したとおりに解釈してもらうことで、意図したとおりの次のステップにつなげることができるのです。
「語彙力」と「表現力」こそが文章力に大切と思う人も多いかもしれません。しかしこの2つは大切ではありますが、さらに良い文章にするための要素に過ぎません。
文章力がない原因は「語彙力」や「表現力」の不足とは限らず、「準備する力」と「想像力」を使えば今の語彙力でも十分に文章力を高めることはできるのです。
なぜ社会人にとって文章力が必要なのか
学生時代は読書感想文やレポートなど、文章自体が評価となる課題があり文章力の重要性を感じる機会が多かったはず。社会人になればWebライターやコピーライター、作家で無い限り、文章自体が評価されることはありません。
しかし、社会人になればさらに文章力は重要となります。社会人にとってなぜ文章力が必要なのか。それは文章力があると次のようなメリットがあるからなのです。
人を動かすことができる
ビジネス文章で大切なのは読み手に「どうして欲しいのか」が伝わること。文章には人を動かす力があります。
どの文章にも必ず読み手がいますね。ビジネスにおいては同僚や上司、取引先、エンドユーザーなどが読み手となるでしょう。読んだ後の行動をイメージして文章を作成することで、思い通りに仕事を進められます。
例えば自社製品をアピールする文章では「その製品を買うメリット」がエンドユーザーにとって何よりポイントになること。それがうまく伝われば購買意欲を刺激し、大ヒット商品になるでしょう。
文章力で仕事の成果が変わるのです。
自分の考えをまとめられる
文章力があると自分の考えを上手くまとめられるようになります。文章を書くために、自分の考えをまずまとめる必要があるので、自然と自分の考えをまとめる力も身についていくのです。
頭の中にある考えや感情がまとまっていないと、書いたり話したりすることはできません。
「このアイデア、どう思う?」と聞かれてすぐに3つ以上具体的な良い点を書き出せる人は少ないでしょう。これはとっさの質問で頭が整理されておらず、すぐに言葉にすることができないから。
文章力がある人は頭の中の情報整理が習慣化されています。突然の質問にも即座に情報を整理し、考えをまとめられるのです。
自分の考えや意見がまとまっていると積極的に発言できたり、わからないことを質問できたりするので、仕事もスムーズに進められるでしょう。
円滑なコミュニケーションが取れるようになる
円滑なコミュニケーションに大切なのは、トークスキルだけではありません。オンラインでのやり取りが増えている今、文章のみでコミュニケーションをスムーズに取れるスキルも大切なのです。
文章力があると相手に伝えたい内容を誤解なく伝えられるため、無駄な工程が削減できます。文章力がないとメールの内容が一度で伝わらず、何度か確認が必要になることがあるでしょう。
自分の意見を明確に伝えられないと不要な確認作業が多くなり、時間もかかります。話が噛み合わないと思われると次の仕事に影響が出てしまうかもしれません。
文章力があることでコミュニケーションがスムーズになり、効率よく仕事が進められるのです。
良い文章とは
ビジネスにおける良い文章とは、読み手に思いや考えがしっかり伝わる文章のこと。
わかりやすい文で書かれている
わかりやすい文章は1つ1つの文もわかりやすいもの。次のことに気をつけて書くと分かりやすい文になります。
・漢字:ひらがな=3:7
わかりやすい文とは読みやすい文のこと。PCで変換すると難読漢字も入力できてしまいますが、自分も読みづらい漢字を使うのは控えましょう。
・専門用語を多用しない
専門用語は共通理解となっている語のみの使用に控えましょう。別の業界や初対面の相手など相手の情報量がわからない場合は極力避ける方がわかりやすくなります。
・主語と述語が対応している
日本語は主語がなくても意味が通じるケースも多いため不明瞭になりがち。接続詞で次から次へと文をつないでしまうと筋の通らない文になってしまう可能性もあります。主語と述語を意識することで話の筋が通りわかりやすくなるでしょう。
・具体的に表現する
「できるだけ早くお願いします」では相手に判断を委ね、自分の希望を伝えていることにはなりません。「今週金曜日17時までにお願いします」と具体的な数値を用いて表現するようにしましょう。
型に基づいている
テンプレートと呼ばれる型に基づいた文章にすると相手に伝わりやすい良い文章になります。ここではビジネスで良い文章によく用いられている3つのテンプレートを紹介します。
・PREP法
PREP法は結論優先型の1つのテンプレートで、プレゼンで用いられることの多い代表的な文章の型です。
結論優先型とは結論から先に述べる文章の型のこと。先に結論を述べるため、相手に分かりやすく、話の軸がぶれないというメリットがあります。
Point(結論):最も伝えたいポイントを述べる
Reason(理由):結論に至った理由を述べる
Example(具体例):具体例を挙げる
Point(結論):再度ポイントを述べる
・SDS法
SDS法も結論優先型。PREP法に比べると大まかな流れになっていますが、結論を先に述べるので読み手に分かりやすい文章になります。
Summary(全体の概要):最も伝えたいポイントを述べる
Details(詳細):ポイントを具体的に説明する
Summary(まとめ):話全体をまとめる
・列挙型
列挙型は伝えるべき情報が複数あるときに有効な型。まず列挙する数を具体的に挙げることで話の全貌が伝わるので最後までしっかり伝えられます。
全貌:列挙する内容と数を告げる
列挙:伝えたい内容を必要なだけ列挙する
ビジネスシーンではあまり使われないかもしれませんが、相手の感情に訴えたい場面で活躍する型もあります。
・ストーリー型
ストーリー型とは問題点から始まりそこから成功までの道のりを述べる書き方。話が進むにつれて読み手の感情も盛り上がっていく流れのため、相手の感情に訴える文章となります。
「問題点→転機→解決→発展」という流れはドラマや映画のストーリーを思い浮かべれば分かりやすいですね。しかし最後まで聞かないと結論がわからないので、残念ながらビジネスには不向き。
最後まで読ませる技術も必要になるのでストーリー型は、作家やエッセイストに向いている型と言えるでしょう。
文章力を鍛える方法
文章力は誰でも鍛えられる力ですが、どのような文章を書くかによって鍛え方も変わってきます。
ここでは小説家やライターを目指す人にとっての文章力ではなく、一般的なビジネスシーンで使われる文章を書く力が鍛えられる方法をインプット、アウトプットの2つに分けて紹介します。
インプット:知識を増やす
文章力を鍛えるには知識を増やすことが大切。読者を想像するために必要な知識を増やすことです。
語彙や表現方法、文章の型だけではありません。読み手の立場で書いてある文章にするためには読み手の「価値観」「ライフスタイル」「感情」を想像することが大切。自分とは異なる世界の知識を増やしましょう。
・雑誌を読む
・社内外の人と積極的にコミュニケーションを取る
例えばターゲットユーザーの年齢層に合った雑誌を読んで自分の世界の外を知ることで、多種多様な読者背景を想像することができ、ニーズに合った文章を作れます。
暇な時間にスマホを見ているだけでは自分の世界は広がりません。スマホの中にあるのは自分の嗜好に合ったサイト、自分好みの人間関係だけ。自分の知っている狭い範囲の想像力しか使えなくなってしまいます。
意図的に自分の興味がないものにも目を通すことで知識を広げていきましょう。
インプット:考える習慣をつける
文章力を上げるには自分の考えや感情を客観的に捉える思考力も必要。自分の頭の中の考えや感情を客観的に捉えられないと文章にすることはできません。そこで自分が何を考えているのかを考える習慣をつけましょう。
例えばランチメニューを見て「今日はAランチにしよう」と決めた時、「なぜ自分は Aランチを選んだのか?」と考えてみます。
「今日はAの気分だから」で終わってしまいがちですが、もう少し深堀りしてみましょう。「昨日の夕食、脂っぽいものだったからさっぱり系が食べたかった」と気づくかもしれません。
自分の意思決定する時の自分の思考を客観的に捉える練習をすることで、文章を作ろうとするときにも自分の考えを客観的に捉えられます。
インプット:多くの文章に触れる
文章力を鍛えるにはたくさんの文章を読むことが有効です。分かりやすい文、分かりやすくまとまった文章を数多く知り、それを真似することで自分の文章力が鍛えられます。
思考を鍛えるには紙媒体が有効ですが、数多くの文章について学ぶのであれば紙媒体でも電子化されたものでも良いでしょう。中でも一番のおすすめは新聞です。
・限られた字数の中で幅広い年齢層の読者に理解されるよう工夫された文章を学べる
・社説やコラム、相談コーナーを読んで自分と異なる価値観に触れられる
・小説を読むと文学的な表現や描写を学べる
・雑誌広告を読むとテーマを効果的に伝える表現を学べる
このように新聞1つで小説、コラム、記事、広告と多種多様な文章に触れられます。
新聞に抵抗を感じる人は雑誌でもOK。自分の興味があるものだけでなく、その他のページも読むことで幅広い知識を身につけられます。
例えば主婦を対象とした雑誌の中の税金についての記事は、専門的知識がない人でもよく理解できるように文章が工夫されているでしょう。
分かりやすい説明能力が求められる営業職の人にとっては学ぶべきポイントがあるかもしれません。
インプット:語彙力をつける
文章力をさらに上げるには語彙力も上げる必要があります。語彙力が乏しいと言いたいことを表現する言葉が分からず、文章にできません。
考えるときにも言葉を用いているので語彙力が増えればそれだけ思考の幅も広がり文章にできるのです。知っている言葉(認知語彙)の数を増やしつつ、実際に使える言葉(使用語彙)を増やしていきましょう。
・本や新聞、雑誌を読む
・アプリを使いゲーム感覚で鍛える
【おすすめのアプリ】
・語彙力診断
(iPhone用アプリ/Android用アプリ)
・大人の語彙力検定 -“デキる大人”の会話力が身につくアプリ
・Weblio類語辞典(Android用アプリ)
学生のように単語練習をする時間は取れないので、休憩時間や通勤時間、寝る前のひとときなどスキマ時間を使って効率よく語彙力を鍛えましょう。
【語彙力とは】もう「ヤバイ」は使わない!語彙力を鍛えるメリット・トレーニング方法
アウトプット:設計図を作る
文章を書く前に設計図を作ると文章をまとめる力が鍛えられます。建物を建てるとき設計図なしに建てるのは至難の業ですね。文章も同じです。
苦手な人にとっては特に設計図の有無が文章の出来を左右します。慣れてくれば、短い文章であれば設計図も頭の中で作れるようになりますが、
まずは紙とペンを用意しましょう。設計図は3つのステップで書いていきます。
1.「自分が何を一番伝えたいのか」を突き詰めて考え1つに絞って書く
2.1.の内容に対する今後の展開、対応、課題を書く
3.1.になったいきさつを箇条書きで書く
例えば報告書を書く場合には「結果」が何より伝えるべきポイント。次に大切なのは次のアクション。その結果に対する次のアクションを明らかにすることで、この文章を読んだ人に何をして欲しいかが伝わります。
結果に至る経緯についての詳細は落ち着いて読んでもらえば良いのです。このように伝える必要がある順番で書き出すことで、伝えたいポイントに的が絞られ、無駄のない文章に組み立てていけます。
設計図は白紙の用紙に図示するのがおすすめ。ノートに1行ずつ書くより頭の中のアイデアを自由に書き出せます。全て材料が揃ったら、必要事項を選出し、読み手を想像しながら書く順序を決めましょう。
メモを書き出す段階で既に思考はすっきりまとまっているはずなので、ここまでできれば文章にするのは簡単。簡潔で伝わりやすい文章ができあがります。
アウトプット:文章の上手な人の真似をする
社内にいる文章の上手な人の文章を真似しましょう。 各書類には社内で有効なテンプレートがあるかもしれませんね。大まかな書類の骨組みはそのテンプレートを利用すれば大抵上手くいきます。
さらに文章力を上げるには、もっと細かいところで文章の上手な人の真似をしてみましょう。 社内文書の中に文章の上手な人の文を見つけたら要チェック。
・話の展開
・使用されている語彙
・文の長さ
このような点に注意して上手な文章を分析してみると真似しやすくなります。 知り合いの先輩であれば直接、文章力を上げるコツを質問するのも良いでしょう。
アウトプット:ブログを書く
書くこと自体に苦手意識を持っている人は、書く経験を意識的に増やしましょう。日記、SNS、ブログなど好きなものを書き続けることで苦手意識が減っていきます。
今興味を持っていることや今日1日の出来事を書いてみましょう。「どうしても文が浮かばない」という時は親しい友人の顔を思い浮かべ、その友人に「ねぇ、聞いて」と話しかけるつもりになると書けるはず。
音声入力の機能を使うと実際に話をするように文を書けるので、苦手な人でも書きやすいかもしれません。書いたものを時間が経ってから読み直せば、自分で書いたものでも客観的に読み取れ、わかりやすい文章になっているのか確認できます。
ただしSNSやブログはネット上で不特定多数の人の目に触れる可能性があるため、投稿する前に内容を確認することを忘れずに。
アウトプット:要約する
話のテーマを見抜く力をつけるには「要約する」のがおすすめ。読んだ本の内容や最近気になった新聞の記事の要約を書いてみましょう。
要約を書くのに簡単な方法はTwitter。 Twitterは字数制限があるので必然的に内容をまとめなければならないからです。
おすすめの本や映画などについてのツイートを読んでみると要約のコツがつかめるかもしれません。上手なツイートの文章の型を真似して自分でも書いてみましょう。
まとめ
子供のころは「楽しかった」「勉強になった」と書けばよかったかもれませんが、社会人になるとそうはいきませんね。仕事では自分の考えが相手に伝わるよう、読み手を意識して表現する必要があるのです。
お互いに相手の考えがよくわかると安心して自分のことも話せるので、円滑なコミュニケーションが成立し、信頼関係が築けるようになります。
文章力を鍛えれば仕事の成果が変わっていきます。まずは頭の中の整理から始めてみましょう。