「今、この瞬間」を大切に。マインドフルネスの意味・効果・実践方法・メリット/デメリット

マインドフルネス

社員のメンタルヘルス対策として導入する企業も増えている「マインドフルネス」

 

Google やAppleなど大手企業が導入していることで話題になり、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

 

「マインドフルネスって一体どういうこと?」
「瞑想と同じ?」

しかし言葉は広まっても、その詳しい内容はあまり知られていないのが現状です。

 

マインドフルネスは「不安から解放された心の在り方」。身につければ生き生きと毎日を過ごせるようになります。

 

この記事では相談員としてメンタルケアの知識を持つ筆者がマインドフルネスについて効果やメリットを解説。日常生活で簡単にできるマインドフルネスを身につける方法も紹介しているのでぜひ試してみてください。

目次

マインドフルネスとは

 

マインドフルネスは、仏教の思想を医療に取り入れたことが始まりです。

 

1970年代マインドフルネスの創始者、ジョン・カバットジン(マサチューセッツ大学医学大学院教授)はマインドフルネスを次のように定義しました。

 

「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」

the awareness that arises through paying attention, on purpose, in the present moment, non-judgmentally

(参考:日本マインドフルネス学会 https://mindfulness.jp.net/concept/

その後マインドフルネスは認知行動療法に取り入れられ、広く知られることとなるのです。

 

マインドフルネスの言葉はmind(気づき)+ful(いきわたった)+ness(状態)という成り立ちで「自分の感覚や感情を認知している状態」のこと。

 

不安や恐怖、ストレスに心が占領されてしまうと自分を見失い、マインドフルネスは実現できません。不安やストレスは「過去」や「未来」といった自分ではどうしようもないことを深く考えることで大きく膨らむもの。

 

そこで「今の自分」にしっかりフォーカスすることで、過去や未来による不安やストレスを取り除いていき、マインドフルネスを実現させるのです。

 

「マインドフルネス=瞑想」と思っている人も多いかもしれませんが、同じではありません。

 

マインドフルネスとは心のあり方を表す言葉であり、瞑想は心の状態の変化や改善を目的とした技法の1つ。マインドフルネスを実現させるには瞑想だけでなくさまざまな技法があるのです。

 

しかしマインドフルネスという言葉は「心の在り方」という意味だけでなく、「マインドフルネスの心の状態を作り、維持するためのプログラム」や「そのプログラムの中のさまざまな技法」という意味で用いられることもあり、分かりにくくなっています。

 

(参考:医学書院 『【対談】マインドフルネス なぜ医療現場で有用なのか エビデンスとその効果』週刊医学界新聞(第3258号 2018年01月29日

マインドフルネスを実現するための重要な3つのポイント

マインドフルネスを実現するために重要なポイントが3つあります。

 

1.「今の自分」に敏感になること
2.批判や拒否をせず、ありのまま受け止めること
3.時間の流れに任せて今の自分を流すこと

この3つが習慣化されるとマインドフルネスの状態になり、多少の困難やストレスには耐えられるようになります。

 

またマインドフルネスにより他人にも優しくなれるので人間関係のトラブルも回避できるでしょう。

マインドフルネスの効果・メリット

 

マインドフルネスの効果をもう少し具体的にみていきましょう。マインドフルネスの効果・メリットとして代表的なものを紹介します。

集中力が高まる

「集中力が高まる」ことはマインドフルネスの最大のメリットと言えるでしょう。

 

集中とは、そのこと以外の全てを思考から排除すること。まさにマインドフルネスのトレーニングで目指すものです。

 

締め切りが迫った業務をなんとかして終わらせなければならないとき、「そういえば、この仕事もやらなきゃ」と他の仕事に気を取られる訳にはいきませんよね。

 

マインドフルネスが身についていると「今、ここ」に容易く集中できるようになるので、最優先すべき仕事のみに従事できるでしょう。

メタ認知能力が上がる

マインドフルネスを身につけるとはメタ認知の力を向上させることにもつながります。

 

メタ認知とは自分の行動や感情をもう一人の自分が分析すること。自分を客観的にみる視点が増えることで感情に振り回されることなくなるのです。

 

例えば業務や人間関係についてなど自分の外側の課題を解決することに集中していませんか。そういう人は自分の内面については鈍感になりがち。自分がストレスでダメージを受けていることに気づいていないかもしれません。

 

マインドフルネスで自分の内面に向き合う習慣をつけると、だんだん自分の感覚や感情を客観的にとらえられるようになるため、メタ認知ができるようになるのです。

 

【メタ認知とは】実はもうあなたはできている!?メタ認知能力の高い人の特徴・トレーニング方法

ストレスが軽減する

ストレスは理想や想像と現実が大きく異なることに違和感を覚えるために発生します。

 

マインドフルネスが身についていると理想は理想、現実は現実とそれぞれをそのままに認識できるので、ストレスを感じなくなるのです。

 

例えば仕事がなかなかはかどらず締め切りに間に合わないかもしれない時、「どうしよう」と焦ると集中力もなくなりミスにつながる恐れもありますよね。

 

「どうしよう」と思うのは、「本当は間に合う」という理想と「間に合わないそうもない」現実との違いに「こんなはずがない」と戸惑っているから。間に合わなかった時の状況を想像して焦るのです。

 

しかしマインドフルネスが身についていると焦ることはありません。

 

理想と比較して現実を否定せず、現状に集中できるので、現状を事実として冷静に判断してその上で周囲に協力を要請する、締め切り延長の交渉をするなどの対策を考えることができるのです。焦りや不安によるストレスを感じずに仕事を進められるようになるでしょう。

ポジティブ思考に気づきやすくなる

マインドフルネスは自分の感情に敏感になるので、自分の中にあるポジティブ思考に気づきやすくなります。いろんなことが楽しくなってくるのです。

 

「この人、嫌いだな」「こんな仕事したくない」などのネガティブ思考は良くないと思って封印していませんか。自分としてはネガティブ思考だけを我慢しているつもりでも、実は同時にポジティブ思考も抑えてしまっているのです。

 

快・不快の気持ちは自然なもの。自分でコントロールできるものではありません。

 

ネガティブであろうとなかろうとそれを抑えることはとても不自然なことで、気がつかないうちに自分にストレスをかけてしまっています。

 

マインドフルネスが身につくと自分の感情に素直になるので、ポジティブな感情もネガティブな感情もそのまま受け入れられるようになるのです。

 

今までは意識していなかったけれど、いろんな場面で「楽しい」とポジティブに感じていたことに気づくようになるでしょう。

 

・朝、目覚まし時計がなる前に目が覚めたなんて「すごい!」
・迷った挙句、Aランチにして「正解!」

意識していなかった自分のポジティブ思考に気づくことで、日常生活が楽しくキラキラしたものになっていきます。

良好な人間関係を築ける

マインドフルネスは「今、ここ」に集中する心構え。過去に相手が自分に対しどんな言動をしたかは関係ありません。つまり感情抜きに相手の話を聞くことができるのです。

 

自分の内面と同じように他人に対しても敏感になる姿勢ができているので、傾聴の姿勢で話を聞くことができます。傾聴することで、相手の表情や言葉遣いから発言以上の情報を得ることができるでしょう。

 

また傾聴の姿勢は相手に安心感を与え、相手もこちらの話を肯定的に聞こうとしてくれます。その結果お互いの情報交換が円滑に運び、良好な人間関係を築くことができるのです。

 

マインドフルネスによって自分を大切にする気持ちができていると、他人も自分のように大切にすべき存在と思えるのです。

 

傾聴力はコミュニケーションスキルの重要な鍵!メリット・身につける方法

マインドフルネスのデメリット

 

メリットがある一方で、マインドフルネスには次のようなことに注意する必要があります。

 

いずれも正しくマインドフルネスを身につけられれば回避ではありますが、事前にしっかり把握しておきましょう。

さらにストレスを感じる恐れがある

マインドフルネスは「今、ここ」に集中するため、今悩んでいることに真正面から向き合うことになる可能性もあります。

 

それは一番向き合いたくない、辛いことかも知れません。そこでマインドフルネスを実践することでさらに大きな苦悩やストレスを感じることがあります。

 

しかし、それも自然なこと。向き合うことから逃げた自分のこともそのまま受け入れるべきなのです。次の日もまたその次の日も諦めずに「今、ここ」に向き合いましょう。何度逃げても何度でもまた向き合うのです。

 

今の自分に向き合って「辛いけど頑張ってるね」と思いやることで不安が減少してきます。もし何度向き合おうとしても無理な場合は、自分1人では難しい状況かも知れないのでカウンセラーなど専門家の力を借りましょう。

義務感に苛まれる

マインドフルネスはできるだけ毎日継続することが理想です。

 

しかし、真面目な性格だとそのことを厳守しようとし過ぎるあまり、ストレスを感じてしまうことがあるかもしれません。「やらなきゃ」というその感情をまず流すことから始まるようになり、その最初の一歩が重荷になってしまうのです。

 

習慣化されるように初めのうちはタスクリストやリマインダーを設定することをおすすめしますが、あまりにもそのこと自体がストレスになるようであれば、まずは週に1回から始めるのもOK。

 

慣れてきたら少しずつ回数を増やし、毎日に近づけていきましょう。

マインドフルネスの実践方法

 

マインドフルネスは専門家と一緒に行えば正しい方法で行うことができ、効果も速く実感できます。ここでは、自分1人で日常に取り入れられるものを紹介します。

 

興味が湧いたものをまずは1つやってみましょう。どんな方法を行う場合でも、大切なことは「自分」に意識をむけることです。

 

効果が出るまで多少時間かかかりますが、諦めずに毎日続けてみてください。習慣化されるまではスマホのタスク管理機能やリマインダーを利用するのもおすすめです。

 

(参考:サワイ健康推進課『すきま時間でOK! マインドフルネスで“心のストレッチ』、Psychology Today 『New Study Finds Meditation With Walking Reduces Anxiety』)

瞑想

瞑想の目的はメタ認知や自身の感情に気づき、現実を客観的に見つめられるようになること。

 

リラクゼーションの手段と誤解されることもありますが、結果的にそういう効果もあるだけで本来の目的は迷いが出た時の心のリセットです。

 

瞑想にもさまざまな方法がありますが、ここではいつでも簡単にできる「歩行瞑想(マインドフルネス・ウォーキング)」を紹介します。

 

1.体の力を抜き、リラックスした状態で深呼吸。意識を足の裏に向けます。

 

2.自然に呼吸をしながら歩き始めます。

 

3.歩いている間は全神経を「足」に向けましょう。
・踏み出す足の裏の感覚
・重心移動
・それに伴う反対の足の感覚
・足の指1本1本の感覚

 

4.足以外の体の部分にも意識を向けていきます。
・体幹、腕、肩、手、指

ゆっくり1歩ずつ行うのが理想ですが、時間がなければ普通の速度の歩行でもOK。

 

ただ歩くだけですが、足に意識を極端に集中させることで心がリセットされます。それまでの感情や不安に引きずられることなく、新たな気持ちで進められるようになるのです。

 

【目から鱗】効果抜群な”深い瞑想”のやり方・コツ大全・効果が出ないワケ【アプリ】

葉っぱのエクササイズ

このエクササイズは、自分の思考をキャッチ、葉っぱの上にその思考を乗せるというもの。今このときの思考に対して評価や判断をすることなく、ただ自然に消えていく様子を観察するのです。

 

このエクササイズには自身を客観的に見つめられるようになる効果が期待できます。

 

1.想像してください。あなたは今、河原で目の前の川の流れを見ています。ゆっくりとした川の流れに乗って、葉っぱが1枚、また1枚と流れてきました。

 

2.今、思ったことを葉っぱの上に乗せましょう。

「昔、キャンプに行ったな」「川の水は冷たいんだよな」

 

3.思いを乗せた葉っぱが流れていく様子を眺めていましょう。

 

4.次の葉っぱが流れてきたらまた思いを乗せ、流します。

エクササイズの時間は好きな長さで構いません。これは通勤電車の中や買い物するときのレジの待ち時間でもできるエクササイズです。

 

青い空に白い雲が流れていくようなお天気が良い日には、雲に思いを乗せて流しても良いでしょう。

レーズンのエクササイズ

「食べ物を一口食べる」という行動を細分化するエクササイズです。これによって身体感覚を味わっていきます。

 

食べるという工程を非日常的なレベルまで細分化し、その都度自分の感覚や感情を意識することで「自分を知る意識を持つ感覚」が身についていくのです。

 

かなりゆっくり食べることになるので習慣化されると、ダイエット効果も期待できるというおまけつき。

 

有名なのはレーズンですが、どんな食材でもできます。できれば直接手でつかんで食べるもの、形が一定でないものを選ぶようにしましょう。

 

例えば「みかん」を食べる場合。

 

みかんを見て
「黄色だ」「形がいびつだな」「この部分はへそと言うんだっけ」

 

みかんを持って
「ま、このくらいの重さだね」「意外と冷たい」「皮を向かないとあまり匂いはしない」

 

皮をむいて
「あぁ、爪に皮が入ってしまった」「この果汁が飛ぶのが厄介なんだよな」

 

1房取って
「小さい房だ」「色がきれいだな」「白い筋がいっぱいついてる、取ろうかな、どうしよう」

 

口に入れて
「やっぱり冷たい」「ざらざらの面とつるつると面がある」

 

ひと噛みして

「あ、果汁が出た」「少し酸っぱい」

 

何度か噛みながら
「だんだん甘みが出てきた」「美味しいな」

 

飲み込んで
「飲み込んでしまった」「のどから食道に行ったかな」

「手に取ってポイっと口に入れ、噛んだと思ったら飲み込む」はNG。超スローコマ送りで食べてください。それぞれの工程で、自分がどう感じているかを意識します。

 

目、耳、鼻、手、舌。感覚器官からどのような情報が脳に集められているか、感じるようにしましょう。

 

マインドフルネスは「今の自分」に意識をフォーカスさせること。このトレーニングは食べるという行為を通して自分の気持ちに気づけるようにしていきます。

 

この方法でみかん1つを食べるとかなりの時間を要しますので、休日の時間がたっぷり取れる時に試してみましょう。ランチの時間を使うのなら、おかずの1口だけエクササイズに使うという方法もOK。

マインドフルネスに関する本を読む

最後に、マインドフルネスの効果がとてもわかりやすい書籍を紹介します。

 

つらいと言えない人がマインドフルネスとスキーマ療法をやってみた。』著:伊藤絵美 出版:医学書院

 

 

「自分の痛みに全く気付いていない男性」がマインドフルネスで劇的に変化していく様子が描かれている本です。上で紹介した方法もさらに詳しく書かれていますので、ぜひ参考にしてください。

 

まとめ

マインドフルネスは「自分はこれで良いのだ」と自分を信じることが最終目標です。自分のことを研究し、長所も短所も含めて自分のことなら何でも知っている人になりましょう。

 

自分を客観的に見れると、不思議と他人に対しても寛容になるものです。価値観が違っても当たり前、自分と違う意見でも当たり前と思えるようになるのでしょう。

 

今、この記事を読んでどんな気持ちになりましたか。それを受け止めることがマインドフルネスの最初の1歩になるかも知れません。

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