「仕事がうまくいかない」
「こんな自分が大嫌い」
仕事をしていれば必ず1度はやってくる「何もかもが嫌になってしまう最悪の状況」。
そんな気持ちを楽にさせてくれるのが「セルフコンパッション」です。
「聞いたことあるけど、よくわからない」そう思うセルフコンパッション初心者の人たちに向けて、相談員としてメンタルケアの知識を持つ筆者がセルフコンパッションについて分かりやすく解説します。
セルフコンパッションを身につければ最悪な時でも必ず「もう一度やってみよう!」と前向きに。日常的に取り入れやすい身につける方法も紹介していますので、ぜひ参考してください。
目次
セルフコンパッションとは
セルフコンパッション(Self-Compassion)とは直訳すると「自分への思いやり」。自分を愛おしく思い、大切にする気持ちのことです。2003年アメリカの心理学者クリスティーン・ネフ博士によって提唱されました。
セルフコンパッションは3つの要素から構成され、これに従って行動することでネガティブ思考に偏ることなく、幸福感のある生活が実現すると言われています。
自分に対するやさしさ(Self-kindness)
自分に対して厳しく批判的・判断的な態度を取らずに、優しく思いやりのある態度を取ろうとすること
人間の共通性(Common humanity)
孤独感や疎外を感じることなく、人間として生きるうえで他者と繋がっているという感覚
マインドフルネス(Mindfulness)
自分の経験による苦痛を無視したり誇張することなくバランスのとれた自覚をもって捉えること
セルフコンパッションはどんな時でも自分を嫌いにならない心構えのようなもの。
「こんなんじゃダメだ」と自分を責めたり、「こんなにひどい気持ちになる人なんて他にいないだろう」と孤独を感じてしまったりするとなかなかネガティブ思考から抜け出せないもの。
しかしセルフコンパッションを身につければ自分だけが辛いという悲観から解放され、ありのままの自分を受け入れる姿勢ができます。「不完全な自分でいいんだ」と自分を認めることで、前に一歩進む勇気が湧いてくるのです。
セルフコンパッションはビジネスシーンでも効果を発揮。セルフコンパッションが高まると自分だけでなく、他人も同様に認められるようになるため、ビジネスで大切な「良好な人間関係の構築」や「コミュニケーションスキルの向上」が実現できます。
また幸福感が高まることによりストレス耐性も身につけることができるため、心身ともに健全な毎日を過ごせるのです。
セルフコンパッションの効果
セルフコンパッションには次のような効果があります。
心身ともに健康でいられる
セルフコンパッションを高めると常に自分を大切にするようになるので、きちんと心身の健康管理ができます。
体の疲れは感じても心の疲れには意外と気づかないもの。
セルフコンパッションにより自分と向き合う時間を持つようになるので、心身の不調にも敏感になります。疲れを感じたらリラックスする時間を多くしたり、医療機関を受診したりなど早めに対処できるのです。
業務効率が上がる
セルフコンパッションが高まると業務効率が上がっていきます。
課題やトラブルに直面すると「どうしよう」と不安になり焦ってしまいますよね。焦るばかりで一向に先に進まずさらにはミスにつながってしまうことも。
しかし、セルフコンパッションによって現実をそのまま受け止める姿勢ができていると不安で焦る気持ちを抑えられ、落ち着いて課題に対処できるのです。先の心配をすることなく今に集中するため、効率よく仕事ができるでしょう。
良好な人間関係が築ける
セルフコンパッションでは自分に対する優しい気持ちを大切にするため、他人にも優しい気持ちで接するようになります。他人のことも自分の一部のように感じることができるのでしょう。
他人の言動に対して即座に反発したり批判したりすることはありません。まずは全てをそのまま受け止め、その上で必要があれば意見を伝えるでしょう。
どんな行動でもまずは受け止めてくれるので、セルフコンパッションができている人には安心感があります。
また上司であろうと友人であろうと、誰に対しても同じような姿勢で接するため、どのような場面でも良好な人間関係を築けるでしょう。
幸福度が高い
セルフコンパッションが身についていると「自分は幸せだな」と感じやすくなります。
セルフコンパッションを構成する要素の1つ「自分に対する優しさ」。「わがまま」や「自分に甘い」と誤解されがちですが、これは自分の弱さや自分の過ちをごまかさずにそのまま受け入れること。「わがまま」な人のように常に自分を正当化するのとは異なります。
例えばミスした時に「大丈夫、次は頑張ろう」と自分自身を励ます気持ちがセルフコンパッション。どんな行動をしても自分に対して温かく包み込むような姿勢を保てるので、孤独を感じることがなく幸せな気分でいられるのです。
不安や抑うつ状態になりにくい
セルフコンパッションにより不安や抑うつ状態になりにくいと言われています。
例えば「こんなひどい目にあうのは世界で自分だけしかいない」とひどい孤独を感じたとき。誰にも相談できず1人で悩み続けるのは出口のないトンネルに入った気分ですよね。
セルフコンパッションが習慣になっていると、孤独を感じたとしても「自分は1人で生きているのではない」とすぐ思い直すことができ、トンネルの先にも出口はある信じられるでしょう。
孤独を感じている現実から目を背けないこと、他にも苦しんでいる人たちがいると思えることで大きな不安にならずに済み、前に進む気力が湧いてきます。体調を崩してしまうほどの大きなストレスを回避できるのです。
セルフコンパッションを高める方法
セルフコンパッションを高める方法は認知行動療法としてさまざまな方法が行われています。
中でもイギリスのポール・ギルバート博士が提唱したコンパッション・フォーカスト・セラピー(Compassion-Focused Therapy、CFT)という心理療法はよく知られるもの。
CFTは心理療法ですので一般的には専門家の指導のもとで行うべきものですが、ここではその中から日常でも簡単にできる方法を紹介します。
自分に集中する時間を作る
1日に1回、自分に集中する時間を作りましょう。5分でも時間がない人は1分でも構いません。これは準備運動のようなもの。セルフコンパッションは感情に支配されていると実現できないので、まずは心を落ち着かせます。
・楽な姿勢をとる(椅子に座る、ベッドに横になるなど)
・目をやさしく閉じる
・周囲に誰もいない、真っ白な壁と天井に囲まれている自分を想像する
・呼吸だけに集中する
このように自分をリセットする時間を作ることで、直面している悩みや課題を思考回路からはずします。
感情も静まるので、その後再び悩みや課題に向き合うと、今度は冷静に対処できるようになるでしょう。
反省ノートを作る
今日1日の反省ノートを作りましょう。日記は1日の出来事を書くものですが、反省ノートに書く内容は「自分の気持ち」です。
①出来事
②それに対する自身の行動
➂その時の気持ち
このように出来事に関する自分の気持ちをなるべく細かく書き出します。友人に愚痴を聞いてもらうつもりで書くと書きやすいかもしれません。
理想のコーチを想像する
「この人が自分のコーチだったら良いのにな」と思える理想のコーチを想像しましょう。
芸能人でも小説の登場人物のような架空の人物でも構いません。身近な社内の上司でももちろんOK。温かく優しいまなざしを持ち、間違ったことはきちんと正してくれるような理想的な人物がおすすめです。
コーチは自分の心の中でのみ存在します。本人にも周囲にも告げる必要はもちろんありません。
1つ仕事が終えたら、心の中のコーチは「よく頑張ったね」と喜んでくれるでしょう。自分がひどく落ち込んだ時にはコーチはどんな言葉をかけてくれるでしょうか。
いつでも心の中でコーチと相談することで、客観的に自分の言動を評価できるようになっていきます。失敗しても感情的にならず自分を受け止められるようになるのです。
コーチに反省ノートを見てもらう
毎日書いている反省ノートを時には心の中のコーチに見てもらいましょう。
理想のコーチになりきって反省ノートに赤いペンでアドバイスを書いてください。励ましの言葉や次につながるアドバイスなど、相手を優しく包み込むようなアドバイスを考えましょう。
自分で書いたノートに自分で別の色で書き込むだけの作業ですが、理想のコーチ役として書くことで自分を他人のように感じられるはず。「自分に対する思いやりとはこういう気持ちなんだ」と気づくでしょう。
まとめ
セルフコンパッションは決して難しいことではありません。親しい友人が悩んでいたら、話を聞いて一緒に泣いて、気が済むまで共に過ごしますよね。自分のこともその親しい友人のように大切にすべきなのです。
・自分が幸せになりたいあまり他人を攻撃して人間関係を壊してしまう
・家族を幸せにしたいあまり仕事をし過ぎて体調を崩し、家族に看病してもらう
どちらも幸せを願う行動ですが、どこかで自分に無理しているので結果的に幸せにはなれません。
もっと自分に関心を寄せて、自分の心の声に耳を傾けましょう。誰よりも自分のことを強く抱きしめてあげましょう。
それがセルフコンパッションです。
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