「SOGI(ソジ)ハラ」という言葉を聞いたことがありますか?
一言でいうと、「どんな性別の人を好きになるか」「どんな性別だと認識しているか」に対してのハラスメントです。近年ではメディアでも取り上げられることも増えましたが、その内容からなかなか明らかにされづらいハラスメントでもあります。
「うちの職場は大丈夫」と思う人ほど危険!SOGIハラの定義や具体例、会社で取り組みべき理由や今すぐできる対策を紹介していきます。
誰かが1人で苦しむことのない環境をつくっていきましょう。
目次
SOGIハラとは
SOGI(ソジ)ハラとは、このように定義されています。
好きになる人の性別(性的指向:Sexual Orientation)や自分がどの性別かという認識(性自認:Gender Identity)に関連して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせを受けること。
また、望まない性別での学校生活・職場での強制異動、採用拒否や解雇など、差別を受けて社会生活上の不利益を被ること。 それらの悲惨なハラスメント・出来事全般を表す言葉です。
引用:なくそう!SOGIハラ
「つまりSOGIハラって、LGBT※へのハラスメントってこと?」
※レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとった言葉
このように思われるかもしれませんが、そうではありません。SOGIは「どの性別の人を好きになるか」「自分をどんな性だと認識しているか」を表すので、全ての人に当てはまるのです。
近年では政府もSOGIハラ撲滅に動き出しています。
・性的指向・性自認を否定するような発言・行動の禁止
(職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する 指針の素案)
・すべての企業や自治体へSOGIハラ、セクハラなどハラスメント防止措置の義務化
(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)について)
このように政府も企業へ働きかけることで、今まで見えてこなかったSOGIハラの実態が明らかになっていくかもしれません。「これまでは許されていた」ではすまされないのです。
もしかしてこれまであなたの耳に入ってこなかったのは、当事者が声を上げれる環境がなかったからかもしれません。
SOGIハラの具体例
では実際に、どのようなものがSOGIハラにあたるのでしょうか。「なくそう!SOGIハラ」を元に紹介していきます。
参考:なくそう!SOGIハラ
差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
「あなた、レズなの?狙わないでね」
「男なのに女になりたいって変な人」
「レズ」「ホモ」など差別的な言葉で呼んだり、性自認・性的指向について「変」「気持ち悪い」と言うのはハラスメントにあたります。
また、異性愛者が異性全員を恋愛対象として捉えるわけではないように、同性愛者も「女だから」「男だから」好きになるわけではありません。よって、「狙わないでね」との発言も不適切です。
このような発言を聞いたこと・言ったことがある人もいるのではないでしょうか。「傷つけるつもりがなかった」と思う人もいるかもしれません。
だからこそ、当事者が声を上げるまで「これはハラスメントだ」「偏見だ」と気づきづらく無意識のうちに差別が広がってしまうのでしょう。
いじめ・無視・暴力
「男なのに男が好き?みんな、この人変だから近づかないようにしよう」
個人の性自認・性的指向がいじめの対象となることは多いかもしれませんが、どんな理由があっても、いじめはNG。特に思春期の学生は、恋愛のことや「周りと違う」ことがからかわれやすい時期でもあるので、注意が必要です。
また、そのいじめの対象となった人と友達や家族だからという理由で、いじめられてしまうこともあるでしょう。
望まない性別での生活の強要
「女性なんだから女性の制服を着て、メイクをしなさい」
「会社の規定」「常識」などで行動を制限されることもあるでしょう。特に制服着用必須の学校や職場では、当たり前に男女で制服のデザインが異なることが多いですよね。
それに対し東京都や神奈川県では、性別に関わらずスカート・スラックスを選択できる学校も増加中。しかし前述したいじめや偏見が気になり、自由に着たい服を着れない現状もあります。
参考:Wezzy 制服「男子はズボン」「女子はスカート」の原則を見直し 男子生徒へのスカート導入は?
不当な異動や解雇、不当な入学拒否や転校強制
「女性なのに女性用の制服を着ないのなら、異動させます」
異動やクビを引き合いにして、ルールに沿うように指示するケースもあるそう。しかしこれは法律的にNG。
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
「客観的合理性」「社会通念上の相当性」がないと解雇にはできませんが、いざ直接言い渡されると恐ろしくて言い返すのは難しいですよね。
誰かのSOGIについて許可なく公表すること
「Aさん、前は男性だったらしいよ」
このように当事者ではないのに周りに言うことを、アウティングと言います。その”Aさん”はあなたを信頼したから伝えたのであって、「全員に公表して良い」わけではないのです。
職場での飲み会や雑談の時間に、うっかり世間話のノリで言う人もいるかもしれません。あなたにとっては「うっかり」でも、相手にとっては人生に関わる大事なこと。他人のプライバシー情報については話すべきではありません。
会社が今すぐSOGIハラ対策を行うべき理由
具体例を読んで、「私も言ってしまったかもしれない」と心当たりのある人もいるかもしれません。しかしなぜわざわざ会社としてSOGIハラへの対策をするべきなのでしょうか。
対策をうたないと、個人はもちろん会社全体にもこのようなデメリットがあります。
・「SOGIで悩む人は存在しない」ことを表してしまう
・職場での心理的安全性が下がり、離職率が増加する
・能力ある人がSOGIによって活躍できず、会社の業績も上がらない
・福利厚生に不平等がおこる
「うちの会社には悩む人はいない」と思うかもしれませんが、なんと50.7%の人が職場の人へのカミングアウトに抵抗があるそう。ただあなたが知らないだけかもしれません。
参考:dentsu 電通ダイバーシティ・ラボが「LGBT調査2018」を実施
このようにSOGIハラは個人では対処しづらく、公表しづらい問題。またこれらの偏見は「やめて」と言ってすぐに解決する問題でもありません。会社全体で文化を変える必要があります。
「私の会社は大丈夫」と思う人こそ、会社としてSOGIハラ対策を始める必要があります。今も1人で苦しんでいる人がいるかもしれません。
会社として行うべきSOGIハラ対策
会社ではどのような対策をうつべきなのでしょうか。3つ紹介します。
行動指針をもうける
会社としてSOGIハラに関するルールを作りましょう。会社としての態度が明確になることで、「何を言う/言わないべきか」「何をすべき/すべきでないか」がわかりやすくなります。
「これってハラスメント?」と思ったときも、訴えやすくなるでしょう。
適切なルールを作るためには、ネットや外部イベントでの情報収集が欠かせません。複雑な法律面も意識する必要があるので、SOGIハラ撲滅にモチベーションが高い人が担当するとスムーズにいくでしょう。
SOGIハラ専用相談窓口を設置する
社内にすでにハラスメント相談窓口があるかもしれませんが、それは“SOGIハラ専用”窓口ですか?
前述したように、職場の人へのカミングアウトに抵抗がある人は約半数。専用の窓口を設置することで、安心して相談できるようになるでしょう。
加えて担当者の選任には注意が必要です。「SOGIハラへの深い理解・知識がある」「決して口外しない」など、事前に必要な項目を洗い出して、厳しく選定しましょう。
研修を実施する
より多くの人に一度に簡単に伝えられる方法が研修です。
・SOGIハラとは
・具体例
・職場でどう振る舞うべきか
・SOGIハラによるリスク
などを研修すれば、前提知識を揃えられます。「この会社はハラスメント対応がしっかりしている」と社員の心理的安全性も高まるでしょう。
意外にも一番ハラスメント研修が必要なのはマネジメント・経営層。意思決定権を持つため、その人たちの理解がないと会社全体の文化は変わりづらいでしょう。
個人でできるSOGIハラ対策
「会社は動いてくれそうにない…」と悩む人でも、今からすぐにできる対策方法があります。
SOGIハラ対策は、同時に周りの人を大切にすることにも繋がります。気になるものから試してみましょう。
自分の思い込みに気づく
最初に大事なのが、「思い込み」に気づくこと。まずは気づくことで、「何を言ってはいけないのか」がわかるようになります。
「これって普通でしょ」
「私が知ってる人はみんなこう言ってた」
もしかしてこれらはあなたの勝手な思い込みかもしれません。
・映画や漫画
・人間観察
・初対面の人との会話
などで「自分と他人の価値観は違うんだ」と気づけるようになりましょう。
関連思い込みをなくす最短ルート|明日試せる”自分らしさ”奪還のコツ・自滅癖の克服方法映画や漫画で学ぶ
映画や漫画は映像とストーリーでわかりやすく当事者の心情を読み取れます。
しかし、あなたの見たストーリーが全ての人に共通するわけではありません。「ゲイって~なんでしょ」がさらにハラスメントになってしまうこともあるでしょう。
決めつけず、あくまで参考として観るようにしましょう。
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目の前の人のことを考えて発言・行動する
SOGIハラの具体例を読んで気づいた人も多いかもしれませんが、これらは相手の性自認・性的指向関係なく全ての人に行ってはいけない行為です。
基本的なことですが、「これが普通」「誰しもがこう思っているはず」ではなく、「目の前にいる人がどう感じるか」を考えて発言しましょう。
相手の気持ちに敏感になることで、自分の思い込みに気づくこともあります。
万が一傷つける発言をしてしまっても、相手の表情や言動から気づけるようになるはず。その際は速やかに謝り、「どう言えばよかったか」「なぜ言ってしまったのか」を考えて、次からは気をつけましょう。
SOGIハラへの対処法
もしあなたがSOGIハラを受けてしまった場合、社内外の専門機関に相談しましょう。社内でのアウティングが懸念される場合は、外部の専門窓口がおすすめです。
専門的な知識や深い理解のある担当者が、あなたの苦しみをじっくり聞いてくれるでしょう。
他にも周りに同じような悩みを抱えている人がいたら、その人に相談してみるのも良いですね。その人なりの対処法を教えてくれるかもしれません。
専門機関の相談窓口
SOGIハラ以外にも!あなたはいくつ知ってる?職場で起こり得るハラスメント
SOGIハラ以外にも、職場ではさまざまな種類のハラスメントが起こり得ます。例えば以下のハラスメントを知っていますか?
・パワーハラスメント(パワハラ)
・モラルハラスメント(モラハラ)
・ラブハラスメント(ラブハラ)
・レイシャルハラスメント(レイハラ)
・ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
・ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
「自分は大丈夫」と思っていても、知識不足だと被害者にも加害者にもなる可能性が高まります。被害者、そして加害者にならないように、以下の記事をぜひチェックしてみてください。
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職場環境の悩みに耐えられず会社を辞めたいと思っても「周りに迷惑がかかる」と辞められない人も多いでしょう。そんな人には退職代行がおすすめ。あなたの代わりに会社に退職の意思を伝えてくれるので、気まずい思いをせずにすみます。
・周りの目が気になる人
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・ハラスメントを受けている人
このような人は、退職代行を利用すればスムーズに辞められるでしょう。きっとストレスからも解放されるはずです。
不安な場合は、まずは退職代行サービスに相談してみましょう。 安全に利用できるおすすめの退職代行は「【2022年徹底比較】退職代行おすすめ人気ランキング29選」の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。