承認欲求とは「自分を認められたい」という欲求のこと。
「認められたい」気持ちは誰にでもありそうですが、承認欲求がなさそうな人もいます。ストレスなく過ごして楽しそうで、承認欲求が強い人にとっては羨ましい存在ですね。
「どうしたら承認欲求はなくせる?」
「そもそも承認欲求とは何?」
そういう疑問に、相談員としての職務経験がありメンタルケアの知識もある筆者がお答えします。承認欲求をなくしたい、と悩んでいる人にぜひ読んでいただきたいです。
目次
承認欲求とは
「承認欲求」とは、「自分を認められたい」という欲求のこと。アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した「承認欲求論」※でよく知られるようになりました。
承認欲求は大きく2種類に分かれます。
・他者承認欲求…他人に認められたいという欲求
・自己承認欲求…自分で自分を認めたいという欲求
一般的に「承認欲求がない」と言われる人とは「自己承認欲求」が満たされ「他者承認欲求」が強すぎない人のこと。逆に「承認欲求が強い」人は「自己承認欲求」が満たされず、「他者承認欲求」が非常に強い人のことです。
他者承認欲求だけが強すぎると、自己承認が難しくなります。期待通りに評価されなかった時にひどく落ち込み、自分をダメな人間だと思ってしまうのです。
逆に自己承認欲求だけが強すぎても、「自分さえ良ければそれで良い」と周囲の意見も聞かない勝手な行動になり、他者から認められにくくなるでしょう。
どちらの承認欲求も全くない人はいないはず。人は「認められたい」と思うから前に進んでいけるのです。この2つの欲求がバランスよく満たされると、「自分はこれで良い」と自己肯定感が高まり、「自分の目標に向かって進んでいこう」と強い前向きな気持ちが生まれると考えられています。
※マズローの理論は人間には5つの階層の欲求があるとし、1つの欲求が満たされると次の階層の欲求が現れるというもの。その中で「承認欲求」は社会の中で安全に暮らせると出てくる欲求で、承認欲求が満たされることで「自分はこうなろう」という自己実現の欲求が現れるとされています。
承認欲求がない人の特徴
「承認欲求がない」と言われる人は次のような人です
・自己承認欲求が満たされている
・他承認欲求が強すぎない
「自分は今の自分で良い」と自分のことを認めることができているため、他人からの承認を求め過ぎることがありません。さらに具体的な特徴をみていきましょう。
他人を認められる
承認欲求がない人は他人を認められます。自己承認欲求が満たされているため、”他人を褒めても自分の評価は変わらない”と信じられるからです。
仕事で成功したことで周囲から称賛されている人に対して、素直に「すごいね」と言えない時はありませんか?
それは他人を褒めると自分が褒められないのでは、と不安になっている証拠。「自分も同じように評価されたい」という他者承認を求める気持ちが強くなっています。
自己承認欲求が満たされていると、他人の成功を喜べます。自分で自分の価値を信じているため、素直に他人を認められるのです。
他人の評価に左右されない
他人からの評価をあまり気にしないのも、承認欲求がない人の特徴の1つ。「自分にできることをすればそれで良い」と自己承認欲求が満たされているため、他人から評価されなくても強い不安は感じません。
しかし結果的に評価されることもあります。他人の評価など気にせず自分の業務に集中するため、成果を上げやすいのです。
結果としては周囲からも評価されますが、それよりも自分が上げた成果を自信として、自己承認欲求をどんどん満たしていくのです。
自分の意志が判断基準である
承認欲求がない人は自信があるので、判断基準は「自分の意志」。例えば自分で無理だと思った仕事は、周りがどう思おうと関係なく断ってしまうこともあるでしょう。その結果チャンスを逃すこともあります。
難しいと感じる仕事を指示されたとき、他者承認が強い人は「これができれば評価される」と考えるため何とか終わらせようとします。
しかし自己承認欲求が強いと、上司から認められることよりも自分が納得する仕事をしたいと思うため、チャンスをあっさり断ってしまうこともあるかもしれません。
モチベーションが上がりづらいこともある
承認欲求がないと、モチベーションが上がりづらいこともあります。今の自分で満足して、それ以上の努力をしなくなるからです。
他者からの承認は限界がありませんが、自己承認においては”どこを限界とするか”は自分次第。自分の目標に向かう意志のみがモチベーションとなるため、その意志が弱くなれば周囲からは「やる気がない」とみなされてしまうでしょう。
承認欲求が全くないのも危険?
「他者承認欲求は持つべきではないのか」と言われると、決してそうではありません。「他者承認欲求」「自己承認欲求」をバランスよく持つことが大事です。
なぜなら自己/他者承認欲求を程よく持つことで、良好な人間関係を築きながら仕事ができるのです。
自己承認欲求が満たされていると「ありのままの自分で良い」という自己肯定感が生まれます。必要以上に他人に承認されようとすることもなく、自然体で過ごせるでしょう。
では、「他者承認欲求はない方が良いか」というとそうではありません。褒められたり認められたりすると、誰でも嬉しいものですよね。
他者承認欲求が満たされると「次もまた頑張ろう」「もっと頑張ろう」と大きなモチベーションにつながります。他人に認められることが自信につながり、自己承認欲求が満たされることにもなるのです。
全く他人承認欲求がなくなると、人にどう思われようと関係ないと思い、自己中心的な考えになります。人のアドバイスに耳を傾けず、「自分さえ良ければそれで良い」と自分勝手な行動につながる可能性もあるでしょう。
良い人間関係を保つため、どちらの承認欲求もバランス良く持つことが大事です。
ほど良い承認欲求を持つ方法
自己承認欲求と他者承認欲求をバランスよく保つ方法を紹介します。バランスを保つとは、等分であることではありません。どちらかに偏り過ぎないようにするということです。自分にとってちょうど良いバランスを見つけていきましょう。
所属コミュニティを増やす
所属するコミュニティの数を増やすことで、1つのコミュニティからの承認に依存しなくなります。コミュニティとは、集団のこと。家族や職場の仲間、学生時代の友達も1つのコミュニティです。
1つのコミュニティで承認欲求が満たされなかったとしても、他のコミュニティでは楽しく過ごし、欲求が満たされることもあるでしょう。「私には弱点もあるけれど、こういう強みもある。それを褒めてくれる人がいる」と自信を持てます。
特に仕事以外で趣味や自己啓発のコミュニティに所属していると多様な他者承認を得られるため、自己承認欲求が満たされやすくなるでしょう。あらゆる人に出会い、他人の価値観を認めるきっかけにもなります。
デジタルデトックスをする
他者承認が強くなってしまう原因の1つにSNSがあげられます。他人からの”いいね”の数に踊らされてしまうのです。デジタルデトックスをして承認欲求のバランスが崩れてしまうことを防ぎましょう。
例えばSNSの「いいね」やコメントでは、自分の投稿への評価や承認が可視化されます。「いいね」に過剰に反応するとその数で他者承認欲求を満たすようになり、自然体の自分に目がいかず、いつまでも自己承認欲求が満たされない状態になるのです。
一定期間PCやスマホと距離を置く「デジタルデトックス」をすることで、承認欲求のバランスが崩れにくくなります。
・設定でアプリを使う時間を制限する
・帰宅したら電源を切る
このようにしてスマホを使う時間を減らしましょう。
他者承認欲求も必要な欲求ですから全く断ち切る必要はありません。しかしデジタル依存にならないように生活の一部にデジタルデトックスを取り込み、デジタル機器と共存することが必要ではないでしょうか。
自分自身を認める
先に述べたように自己承認欲求と他者承認欲求のバランスは人それぞれです。人によって自己承認欲求が強め、他者承認欲求が強めがありますが、それは個性。どちらかに偏り過ぎない限り、悩む必要はありません。
そこで自分の承認欲求はどういうバランスなのか考えてみましょう。例えば過去の達成感を感じた仕事に対してどちらの気持ちが強いですか?
「自分のできる限りのことをやった」
「上司がとても評価してくれた」
自己満足が大きい人は自己承認欲求が強め、逆に、評価されたことが何よりも嬉しいと感じた人は他者承認欲求が強めと言えます。
自分の個性を知ることで「承認欲求が強い」と悩むことはなくなります。ありのままの自分を認めれば、必要以上に承認を求めないようになるからです。
まとめ
承認欲求は前向きに歩むための大切な欲求です。決してなければ良いものではありません。
自己承認欲求と他者承認欲求
この2つのバランスを上手に保って自然体で過ごしましょう。