求人票とは、企業の募集ポジションや募集要項、年収や仕事内容などの情報が載っているもの。
就活・転職活動を行う上で必ず見る求人票ですが、皆さんは求人票の意味や正しい見方をご存じでしょうか。
実は、正しい見方をしないと情報を誤って理解し転職をしてしまい、結果としてミスマッチになるリスクが高くなるのです。
この記事では求人票の効果的な見方について紹介します。正しく求人票を見ることで、自分自身に合う企業を探せるのはもちろん、面接の対策や企業研究もより効率よく進められるようになるので、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも求人票とは何か?
求人票とは、社員の採用を予定している企業が募集概要や労働条件を記載し、求人を申し込む際に提出する書類のこと。
求人票は、公共職業安定書(ハローワーク)や民間の人材紹介会社、人材派遣会社、そして大学・短期大学・専門学校の就職課などで見ることができます。
主に求人票に記載されている内容
求人票の目的は、自社の応募者の増加を目指すこと。当然応募者を増やすには内容や条件などを魅力的に見せる必要があるため、企業ごとに様々な打ち出しがあります。
例)
・未経験歓迎
・残業少な目
・リモートワーク歓迎
しかし様々な内容や打ち出しはありつつも、求人票に載せないといけない基本的な情報は職業安定法により定められています。
・労働者が従事する業務内容
・労働契約期間
・就業場所
・始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日
・賃金額
・健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の適用に関する情報
上記6つは必ず求人票作成のために明示しなければいけない項目です。
ただ、ここで一点注意しなければいけないのが「求人票の情報は絶対ではない」ということ。
例えば給与の記載。ここは多くの企業が見込み額で記載しているケースが多く、面接での評価などにより変動するケースが多いのです。場合によっては記載情報より下がるケースもあるでしょう。
また求人票に記載があったとしても、最終的に内定の場合に発行される内定通知書の内容が原則的に優先されます。
面接の中でポジションの変更がある場合や、求人票の情報が古く内容が異なるケースがあるのです。
そのため、求人票に記載されているからと安心するのではなく、求人票の内容をもとにしっかり企業に説明会や面接で確認するよう気を付けましょう。
求人票の見るときのポイント
さて、ここまでは求人票とは何かをご紹介しましたが、実際に求人票を見てもどこに着目してみればいいのかわからない人も多いと思います。
求人票を見るときのポイントを紹介します。
職種名
求人票を見ると多くの場合、職種名が記載されています。よくあるものとしては「営業職」「事務職」などですね。
しかし、実はここに落とし穴が。職種は企業によって名称が異なるケースが多く、例えば同じ事務職でも業務内容が異なる、あるいは別の名称だが業務内容はほとんど同じケースが存在するのです。
職種名だけで判断せずに、必ず仕事内容の部分も確認し、本当に自分が希望・イメージしている職種かどうか判断できるようにしましょう。もちろん、面接内でもしっかり確認することが大事です。
業務範囲
上記に書いたように名称が異なる点も勿論ですが、例えば同じ職種名でも任せられる範囲が異なるケースも存在します。
人事・総務などバックオフィスやミドルオフィスと呼ばれるポジションは人事がすべてを担うケースなど、会社によって範囲が異なるのです。それ以外にもエンジニアのような専門職の場合、要件定義を行うのか保守・運用だけなのかなどこちらも範囲が異なるケースが多く存在します。
自分のスキルや求めるものを軸に、ここがぶれないように確認することが重要です。
雇用契約の期間
契約期間が無期か有期かということもしっかり確認しましょう。募集内容が「正社員」となっている場合は無期、「契約社員」となっている場合は有期になります。
未経験職種などはスタートが契約スタートの場合や、大手企業でも有期での採用ポジションのケースがあるため、必ず確認しましょう。「パート・アルバイト」の場合は有期であることがほとんどですが、無期の場合もありますので面接の際に確認をしてみてください。
期間を確認する理由としては、自分の年齢やスキル、今後のビジョンによってリスクが変わってくるからです。例えば有期のポジションの場合、以下のような種類があります。
・成果次第では正社員になれる可能性がある
・一定期間務めると基本的には正社員になれる
・正社員にはなれないが無期契約社員として雇用される
・正社員にはなれず、期間満了後は退職になる
・成果に応じて期間が延長される(契約社員のまま)
どんなに働いても正社員になれない場合、まだ若く経験を積んでさらに転職につなげたいという目的ならまだ良いですが、すでに結婚しており安定を目指す人にはリスクが高いでしょう。
このようにその時の状況や今後のビジョンによって何を選ぶかが変わってきます。契約期間やその後の動向については必ず確認し、認識間違えが無いように進めましょう。
勤務場所と転勤の有無について
勤務場所は求人票に書かれている場所が最初の勤務地になることが原則ですが、そこから転勤があることも。転勤の有無は自分の生活環境にも関わってきますので、重要です。
求人票で「転勤有り」とされている場合は、その会社のホームページなどを確認して、どのような場所に転勤となる可能性があるのかを確認しておきましょう。
注意点として、大手企業など全国拠点がある場合「転勤の可能性有り」と表記されていることがあります。この場合、ほとんど転勤はないが一応全国拠点があるため可能性が0ではないので表記している可能性があるのです。
そのため、転勤の可能性有りの表記の場合は頻度や可能性など含め面接で確認しましょう。
賃金・給与
賃金に関しては、重要なのは基本給の額と手当の内訳。月給制や年俸制の場合、最近は基本給の中に「みなし残業代」が含まれていることもしばしばあります。
基本給の全部が純粋な基本給なのかを求人票の記載と面接、そして内定時に出る内定通知書で必ず確認しましょう。
特に求人票には、概要やモデルケースとして記載されているケースが多いため、すべてわからない場合があります。そのため、求人票で大枠の給与額や残業代の有無などをチェックしておき、面接や口コミサイトなどで詳細を確認しましょう。
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【給与に関する用語解説】
・基本給
基本給とは、残業手当や通勤手当、役職手当といった各種手当や、歩合給のように業績に応じて支給される給与などを除いた、基本賃金のこと。
・月給制
「完全月給制」とも呼ばれ、月を単位に基本給を定め、実際の出勤日数に関係なく毎月定額の給与が支給される制度。欠勤・遅刻・早退があった場合であっても、毎月の給与が減額されることなく満額が支給されます。
役職者などに多く見られますが、その他にも「日給月給制」と呼ばれるタイプも。
これは月給として月を単位に基本給を定めますが、欠勤や遅刻・早退などがあった場合にはその分給与から天引きを行うもの。また、給与計算期間の途中からの転職による入社、中途退職の際は日割り計算も行います。
一般的な正社員の雇用形態として多くの企業で採用されているので、月給制と言うとこのタイプを思い浮かべる方も多いでしょう。
・年俸制
「年棒制」は、1年を単位に給与総額を定めるもの。ただし、労働基準法第24条では、最低毎月1回の給与支払いが義務付けられているため、年単位の給与を分割して毎月支給します。
年棒制の場合、ボーナス(賞与)を含めて年棒額を決定するため、毎月均等に給与額を定める必要はなく、ボーナス月に多く振り分けて支給することも。役員などが年俸制になるケースが多く、それ以外だとプロ野球選手など専門技能に長けた職種も年俸制が適用されるケースが多いです。
・みなし残業
みなし残業とは、賃金や手当ての中にあらかじめ一定時間分の残業代を含ませておく制度のことです。固定残業制度とも言われてます。
例えば30時間分の残業代込みと書かれている場合は、最初から給与に30時間の残業代が含まれており、30時間の残業に満たなかったとしてもその分は支払われる形となります。
・インセンティブ
給与制度について使われる時は、目標達成など成果を上げた社員に対して支給される報奨金を指します
・業績連動賞与
業績連動賞与とは、企業または部門の収益状況に連動してボーナス支給額が変動支給される仕組み。 企業・個人の成果に応じて支払われる仕組みのため、業績や成果が悪くなると下がる、支払われない可能性があるものです。
従来の賞与体系は「基本給×○ヶ月」というのが一般的でしたが、近年は業績連動賞与を導入する企業が増えています。
なぜ基本給が重要かと言うと様々な手当でトータルの見込み額が大きくなるケースがあるのですが、その場合基本給は低く、目標を達成できた時のインセンティブ(報奨金)などが高いケースがあるからです。
その場合、目標を達成できないとガクッと給与が下がるリスクが考えられます。
基本給と手当をしっかり確認し、自分が希望する給与に届くのかどうか、あるいはどの様な条件で届くのかを知って判断できるようにしましょう。
また賞与や退職金の有無も確認しておきたいところです。退職金がない企業も増えていますし、賞与は業績連動の賞与なのか、必ず払われるものなのか等によっても変わってきます。
業績連動の場合、業績が悪化すると賞与が出ないということですので、仮に会社が傾く可能性がある場合、今後給与が想定より下がるリスクが出てくるのです。
勤務時間
勤務時間は、始業時間と終業時間を必ず確認しましょう。自宅から勤務場所が遠い場合や、子供の保育園への送迎がある場合などそれぞれの希望があるはずです。
また残業などが多い場合は遠すぎると拘束時間の兼ね合いで厳しい場合もあるので、バランスを取れるようチェックしましょう。
フレックスタイム制、裁量労働制、シフト制など、特殊な勤務時間形態がとられている場合もありますので、そのような条件も確認しておくと安心です。フレックスタイム制の場合、企業によってコアタイムなどルールが異なるため、説明会や面接で必ず確認しましょう。
休日・休暇
休日については単に「週休2日制」と表現されている場合は、全ての週において週休2日とは限りません。「完全週休2日制」と書かれている求人票であれば、全ての週で週休2日であることが保障されます。
また「週休2日」といっても「土日休み」と明記されていない場合は、必ずしも土日が休日とは限りません。祝日が休みかどうかや、夏季休暇や年末年始休暇があるかどうかは会社によって違います。自分の希望する休日形態をしっかり把握しておきましょう。
有給休暇に関しては、求人票に書かれていてもいなくても、法律上当然に発生する休暇となります。しかし規定は会社によって異なるため、詳細は面接や内定承諾前に必ず確認しましょう。
雇用保険・社会保険
雇用保険や社会保険の条件についても確認しましょう。
フルタイムの求人の場合、無期契約または30日以上の有期契約であれば、企業規模に関わらず雇用保険は加入対象となりますので、原則的にほとんどのケースで加入することになるでしょう。
しかし所定労働時間が20時間未満のケースや、学生である場合は対象外となります。パートタイムの勤務で所定労働時間が短い場合や、卒業見込みの学生が在学中に事業所で働いている場合などは該当しません。
社会保険に関しては個人事業の場合、業種によっては適用除外になることもありますが、株式会社や合同会社など法人企業に入社する場合は、2か月で終了する短期雇用契約を除き、必ず社会保険の加入対象となります。
求人票に明記が無い場合は、入社初日から雇用保険や社会保険に加入させてもらえるのか、説明会や面接で確認をして、自分自身の身を守れるようにしておきましょう。
エージェントなどから紹介される求人は問題がない場合がほとんどですが、企業が独自で出している求人票で掲載されていない場合、入ってから実は加入できなかったなどトラブルになるリスクが考えられます。
まとめ
ここまで求人票について解説してきましたいかがでしたでしょうか。
見るポイントを知ることで、自分自身に合う企業を見極めることに繋がるのはもちろん、面接時に確認すべき内容や自分自身で調べておいた方が良い内容を明確化することができます。
それは結果として、転職活動の効率化や不安の軽減に繋がるはずです。
不安がつきものの転職活動だからこそ、余計な部分で不安を感じることなく進められるよう、ぜひ求人票の内容はしっかり見ておきましょう。