職場仲間や友人との関係に疲れ、「もう人間関係をすべて投げ出したい」と思ったことのある人は少なくないでしょう。実際に「職場の人間関係が嫌で転職した」との話もよく耳にします。
それ自体は珍しくありませんが、人間関係をリセットするための転職を繰り返したり、電話帳の連絡先を一斉削除したりするまでになると「人間関係リセット症候群」の疑いがあります。
近年注目され始めた人間関係リセット症候群とはどのようなものなのか、その特徴・原因・対処法を紹介します。
目次
人間関係リセット症候群とは
人間関係リセット症候群とは、その名のとおり人間関係のリセットを繰り返し行ってしまう現象のこと。
「症候群」とついているものの正式な医学用語ではなく、そのような現象や心理状態を指すものです。
人間関係リセット症候群では、人間関係にストレスや負担を感じると、以下のようなこれまでの人間関係を絶つような行動を突然とるようになります。
・一切連絡をとらなくなる
・誰も知らない土地へ引っ越す
そしてまた新たな人間関係を築きはじめ、またその人間関係にストレスを感じるようになると同じことを繰り返します。
SNSや携帯電話が普及し、簡単に人間関係を築けるようになった一方で、常に誰かとつながっているような状況がつくられる現代だからこその現象といえるでしょう。
前述したように人間関係リセット症候群は正式な病気ではなく、治療が必要というものでもありません。
ただ、あまりに周囲との連絡を絶ちすぎると、信頼関係が崩れ自身の生活やキャリアに大きな影響を与えてしまう可能性も。
衝動的にリセットして後悔しないためにも、原因や対処法は知っておきたいものです。
人間関係リセット症候群に陥りやすい人の特徴
人間関係の悩みは誰しもが抱えたことのあるものです。それにもかかわらず、人間関係リセット症候群に陥る人とそうでない人がいるのはなぜなのでしょう。
実は人間関係リセット症候群になる人には、一定の傾向があるとされています。
基本的に1人が好き
1人でいることに安らぎや落ち着きを感じる人は、誰かと一緒にいるだけでストレスを感じ、人と離れることを求めがちになります。
また孤独を恐れないので、これまでの人間関係を失くすことにもあまり躊躇しません。
そのため「突然連絡を絶つ」「誰にも連絡せずに突然姿を現わさなくなる」などの行動を起こしてしまいやすいのです。
ストレスを溜め込みやすい
人間関係でストレスを感じても、それをうまく発散させられる人は人間関係のリセットまでには至りません。
人間関係のストレスは多くの人が抱えており、それでもなんとかうまく心のバランスをとっている人が大半でしょう。
ストレス発散の術を持っておらず、ストレスを溜め込みやすい人が人間関係リセット症候群になりやすいと考えられます。
ネガティブ思考
「この人はいつか自分から離れていくのでは」
「この人は実は私を好きではないのでは」
このように相手を疑ってしまうネガティブ思考な人は常に人間関係にも不安を抱えています。
そして少しでも不安が強まると、これ以上の辛さを避けるために自ら人間関係を絶つことも。
ネガティブ思考が強いほど人間関係リセット症候群に陥る可能性も高くなります。
完璧主義
完璧主義者は自分だけでなく他人にも完璧であることを求めます。しかし関わる人すべてが自分の理想どおりなわけがありません。
自分の理想と相手とのギャップがストレスになり、人間関係に対する疲れへと進展してしまうのです。
また自分が完璧でありたいがために、自分の失敗や隠したい過去を知っている人たちから離れていくケースもあります。
めんどうくさがり
極度のめんどうくさがりの人は単純に人と連絡をとるのがめんどうになったという理由で、人間関係をリセットしてしまうことがあります。
人と関わるのがめんどうなのになぜか周りに好かれてしまう人は人間関係リセット症候群に陥るリスクが高いでしょう。
人間関係リセット症候群の原因
人間関係をリセットするのは決して気軽にできるものではありません。転職や退職ともなれば人生に大きく関わってきます。
それでも人間関係のリセットを実行してしまうきっかけとはどのようなものなのでしょう。
続いて人間関係リセット症候群の原因を解説します。
気疲れ
1人が好きな人やめんどうくさがりの人は、無理して周りに合わせることで人間関係を良好に保っているといえます。
自分の意思に反し周囲と合わせるのは気疲れするもの。そんな気疲れがピークに達し、「こんなに気を使うくらいならば人付き合いなんてしたくない」と思ったときに、人間関係のリセットに走ってしまうことがあります。
自分自身に嫌気がさした
周囲ではなく自分に嫌気がさして人間関係をリセットしてしまうケースも。
「周りに合わせて無理している自分が嫌」
「本来とは違うキャラを演じている自分が嫌」
「本当は繊細なのに大ざっぱなイメージがついている自分が嫌」
このような思いが引き金となります。
SNSで自分自身を自由に発信できる個性を尊重される時代になったからこそ「キャラ」を作ろうとすることに疲れてしまう人が増えているのです。
ありのままの自分でいれる場所を求めて、人間関係をリセットするのでしょう。
環境の変化
人間関係をリセットしたくて転職や引っ越しをするのではなく、逆に環境の変化がきっかけとなり人間関係をリセットするパターンもあります。
「環境が変わったことを報告するのがめんどうくさい」
「報告してまで続ける人間関係ではない」
これはこのような思いからこれまで関わってきた人たちとの連絡を絶つケースです。
人間関係のトラブル
「上司や部下と揉めた」
「一方的に悪口を言われた」
「信頼していた人に裏切られた」
このように周囲との付き合いの中ではトラブルが起きることも。
人間関係のトラブルは当然ですが、人間関係によるストレスに直結します。「リセットしたい」と思う大きなきっかけになるでしょう。
特にネガティブ思考の人はもともと人間関係に不安を抱いているので、ちょっとしたトラブルでも人間関係リセットのきっかけになってしまいます。
人間関係リセット症候群の対処法
人間関係のリセットは必ずしも悪いことばかりではなく、人間関係の見直しにより良い状況に変わることもあります。
一方、一時的な感情で人間関係をリセットし、後悔する人がいるのも事実。
もし衝動的に人間関係をリセットしたい気持ちに駆られたときは、どのように対処するべきなのでしょうか。
客観的にとらえてみる
人間関係をリセットしたくなるときは怒りや悲しみで感情的になっていることが多いもの。
そんなときは正しい判断ができなくなります。一度冷静になり、客観的にものごとを見直す必要があります。
まずは「今、自分に起きていること」や「自分が感じていること」を紙に書き出してみましょう。
書き出すことで状況が整理され、客観的に捉えやすくなります。リセット以外の解決法も見えてくるでしょう。
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リセットすることのデメリットを考える
感情的になっているときはひとつの方向に意識が向きがち。「こんな人間関係、無いほうがマシだ」としか思えなくなっているのですね。
しかし人間関係のリセットにはデメリットも存在します。
冷静になってから寂しくなってリセットしたことを後悔したり、リセットするための退職でこれまでのキャリアを失ってしまう可能性もゼロではありません。
メリットばかりに目を向けるのでなく、デメリットも把握したうえで判断することが大切。
ここでもメリット・デメリットをそれぞれ紙に書き出すと冷静に判断しやすくなるでしょう。
スマホやネットから一時的に離れる
衝動的に人間関係を絶ってしまうのはそれがすぐに実行できる状況だから。
現代では、スマホの電話帳を削除し、SNSを退会することで簡単に人間関係をリセットできてしまいます。
感情的になっているときは勢いでリセットしてしまわないよう、一時的にスマホやネットから離れるのも有効です。
スマホを側におかず、自分の好きなことをして過ごしてみましょう。少し時間を置くだけでも冷静になれるはずです。
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まとめ
人間関係をめんどうに感じることは誰しもあるものです。
しかし関わりあるすべての人が自分にとって煩わしい存在ではないはず。中には、辛いときに相談できたり喜びを分かち合えたりする人もいるでしょう。
人間関係のリセットは、こんな大切な存在をも失くしてしまうリスクのある行為。
勢いだけでしてしまえば後悔することになりかねません。
自身に人間関係リセット症候群の兆候を感じたときは、まず冷静になるよう努めましょう。