様々なハラスメントが問題視されてきてますが、なかでもダイレクトに命の危険があるのがアルコールハラスメント。
飲み会で「アルハラするなよ~」などと軽く使ってしまいがちなこの言葉ですが、実際どのような行為が該当し、どう対策すればいいのか理解できている人は少ないのではないでしょうか。
アルコールハラスメントに関する知識を学んで、被害者にも加害者にもならないように対策をしていきましょう。
目次
アルコールハラスメントとは
アルコール・ハラスメント、通称”アルハラ”は、飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為、人権侵害を指します。
急性アルコール中毒によって最悪の場合、命を落とす可能性がある非常に危険なハラスメントです。
アルハラが起こったきっかけ
アルハラが問題視されるようになったのは1990年代。その頃、テレビ番組にイッキ飲みコーナーが登場したり、とんねるずの曲「一気」がヒットしたり、「イッキ」が日本流行語大賞に選ばれるなど「イッキ! イッキ!」が一大ブームとなったのです。
安い居酒屋チェーンの出現も、そのブームを後押ししました。その影響で学生の急性アルコール中毒が増加し、世間はアルハラを問題視するようになったのです。
問題視されるようになってきたとはいえ、毎年一万人前後の人が急性アルコール中毒によって救急搬送されています。
参考:東京消防庁 東京消防庁<安全・安心情報><トピックス><他人事ではない「急性アルコール中毒」>
職場でアルハラが無くならない理由
アルハラは学生の間だけでなく、会社にも存在します。
日本には昔から「お酒を飲めてこそ一人前」の風潮があり、職場以外のところで社員同士が交流を深めようとする「飲み二ケーション」という言葉もあります。
「多様性」「個人主義」「成果主義」が重要視され始めてきた現代でも、その文化は残っているのが事実。若者の飲み会離れや、仕事とプライベートをきっちり分けたい人の増加もある一方、「上司の酒を断るのか」「私は飲んで吐いて強くなったんだ」と言ってくる上司や先輩もまだまだ存在します。
そんな時代遅れの慣習がアルハラを引き起こしているのです。
アルコールハラスメントの具体例
具体的にどのような行為がアルハラに該当するのでしょうか?特定非営利活動法人ASKおよびイッキ飲み防止連絡協議会が、主要なアルハラと定めている5項目を紹介します。
飲酒の強要
上下関係を利用して飲酒を強要させたり、「伝統だから」と飲ませたり、はやしたてや罰ゲームなどといった形でプレッシャーをかけて、飲まざるをえない状況に追い込んだりすることがこれに当たります。
イッキ飲ませ
イッキ飲みや早飲みをさせることがこれにあたります。場を盛り上げるために行われることが多いでしょう。「イッキ飲み」とは一息で飲み干すことで、早飲みも「イッキ飲み」に含まれます。
意図的な酔いつぶし
いじられキャラの後輩や女性社員など、立場の弱い社員を酔いつぶすことを意図して飲み会を行なうことで、これは傷害行為にもあたります。
吐くための袋やバケツ、「つぶれ部屋」が準備されていることもあるそう。
飲めない人への配慮を欠くこと
「飲めません」と言っても無視してお酒をすすめたり、ノンアルコールの飲み物を用意しなかったり、飲めないことをからかったりする行為がこれに該当します。
酔ったうえでの迷惑行為
他人に飲ませるだけでなく、自分自身がアルコールの力を利用して酔った勢いでからんだり、悪ふざけをしたりして被害を与えることもアルハラに含まれます。ここからセクハラやパワハラが派生することもあるでしょう。
このアルハラは被害者だけでなく、お店と問題になったり、見ず知らずの人を巻き込むリスクもあります。
会社としてのアルハラ対策方法
アルハラの加害者にも被害者にもならないためにはどのような対策をすればいいのでしょうか。まずは会社がやるべきアルハラの対策方法を紹介します。
アルコールハラスメントの教育をする
まずアルハラの定義や被害の深刻さを会社全体に周知しましょう。
例えば新卒研修やマネジメント層向けの研修でアルハラに関する時間を作ると、上司・部下お互いアルハラの心配なく飲み会に参加できるはず。相談窓口や対策委員会を社内に設けるのも良いですね。
会社として何がアルハラなのか明確になっていると、社員同士で気付けるようになったり、飲み会の場でも注意喚起しやすくなったり、被害にあっていた人が相談しやすくなったりします。
また教育と合わせて、アルコールパッチテストやアルハラ度セルフチェックを実施しましょう。
飲み会のルールを定める
飲み会に関するルールを会社で定めましょう。例えば、以下のようなルール。
・幹事はお酒が強い人と弱い人2人選ぶ
・幹事となったらその飲み会の全責任を請け負う
・ソフトドリンクも充実している居酒屋を選ぶ
ルールがあることでアルハラに対する注意喚起がしやすくなります。また「会社のルールだから破らないようにしよう」と社員の意識も変わってくるはず。
ルールを作成するときはアルハラ防止 ガイドライン《モデルプラン》(2000年)を参考にするのがおススメです。
個人としてのアルハラ対策方法
次に個人でできるアルハラ対策を紹介します。
自分のアルコール耐性度を表明する
アルコールパッチテストの結果や過去の経験から、自分のアルコール耐性度を自分自身で把握し、明確に意思表示できるようにしましょう。元々意思表示していれば、無理に誘われることも減り、万が一無理に誘う人がいたとしても周りの人が助けてくれる可能性が高くなります。
お酒に弱いことは悪いことではありません。日本人の4割が、お酒に弱い体質だといわれています。
また性別、年齢、体調によってもアルコールに対する強さは変化するもの。自分の命を守るために、自分自身のアルコール耐性度はしっかりと把握しておきましょう。
断る手段を身につける
お酒に弱い人はもちろん、強い人も飲酒を断る方法を身につけておきましょう。
強い人でも体調によって弱くなってしまうときはあります。また、「自分は強いから」と飲みすぎてトラブルになることもあるでしょう。
自分が今お酒を楽しめる状態なのかを正確に判断し、行動を選択することが大切なのです。
断る理由には、以下のようなものがおススメ。
・ドクターストップがかかっている
・服用している薬の副作用が出てしまう
・運転してきた/これから運転しなければならない
嘘も方便。自分の身を守るために、時には嘘や大げさに言うことが必要な時もあります。
また参加する飲み会を選び断る時はハッキリと断る勇気も大切。どうしても参加しなければいけない飲み会の時は、自分にとって安全な席を選ぶようにしましょう。
関連無駄な飲み会から永遠に回避【見極め方・対処法】みんなが自分と同じだと思わない
先ほども述べたように、お酒に対する強さは人それぞれ。自分が強いからと言って、他人にもお酒を飲むことを強要しないように広い視野を身につけましょう。
例えば、他人のお酒を勝手に頼むのはNG。飲めない人のことを馬鹿にするのもやめてください。
また、「飲み会=コミュニケーション」だと思っている人は、その考えを捨てて飲み会以外のランチやディナーなどのコミュニケーションの場を試してみましょう。
お酒に頼った関係は良好な関係とは言えません。話が合う人とはお酒なしでも良好な関係は築けるはずです。
アルコールハラスメントの被害にあったら
アルハラの被害にあってしまった時の対策方法を紹介します。
もしもの時、対策方法を事前に知っているだけで冷静に対応できることもはずです。
Level1.飲み会中「危ない!」と感じたら逃げる
飲み会中、自分の身が危険だと感じたら他人の目を気にせず「お手洗いに行ってきます」などと言って逃げましょう。逃げるのが無理な場合、その場にいる信頼できる上司や先輩に隙を見て相談したり、直接話せない場合は携帯でメッセージを送ったりしてください。
まず一番大切なのは自分の命。その安全が確保できたら、そのあと相談したり訴えたりする時のために、証拠を録音や録画、日記などのメモで残しておきましょう。
メモの場合は録音や録画よりも信頼性が薄くなってしまうので、5W1Hを欠かさず具体的に書いておくことが大切。周りの人たちに協力してもらい、ハラスメント現場を録画や録音してもらうのもおススメです。
Level2.上司や先輩、同期に相談する
1人で悩まず、同僚や先輩、友人、家族などに相談しましょう。我慢してしまうと、ハラスメントはどんどんエスカレートする可能性があります。
1人で解決できるケースは少ないので「これアルハラかな?」と思った早い段階で周りに救いの手を求めてください。
Level3.社内または外部の相談窓口に相談する
個人で解決策が見つからなければ、組織に頼りましょう。異動させてくれたり、加害者に対し処罰を下したりしてくれるかもしれません。
社内で解決できない場合や会社に相談するのが不安な場合、社内の相談窓口がない場合は外部の相談窓口を利用しましょう。
Level4.法的手段に出る
アルハラ自体を明確に禁じる法律はないのが現状ですが、アルハラによって生じる民事責任や刑事責任から訴えることもできます。
お金を持って償わなければならない民事責任としては、意思に反しお酒を強要して精神的な苦痛を与えてきたことから、不法行為責任で訴えられる可能性があります。会社の飲み会であれば、企業に使用者責任が発生するので損害賠償を請求できる可能性もあるようです。
罰金や刑務所での服役で償わなければいえない刑事責任は、以下の通り。
(転載:enjin 日本初の集団訴訟プラットフォーム お酒の強要は違法!アルハラの人を訴えるときにできる2つの手続き)
「イッキコール」などで飲まざるを得ない状況に陥った場合、コールをした人を現場助勢罪(1年以下の懲役または10万円以下の罰金か科料)で問うこともできるようです。
アルハラから広がり、パワハラやセクハラの被害にあった場合も同じような罪で訴えることができます。
また、飲み会に強制参加させる、飲み会での振る舞いを理由に給与や評価を下げるなどの行為は、業務命令権を使えば訴え可能です。
しかしその場合は飲み会が業務となり、会社は残業代を出さなければいけません。もしそれが支給されないのであれば、パワハラや残業代不払いとして労働基準法違反で訴えることができます。
アルハラ以外にも!あなたはいくつ知ってる?職場で起こり得るハラスメント
アルハラ以外にも、職場ではさまざまな種類のハラスメントが起こり得ます。例えば以下のハラスメントを知っていますか?
・パワーハラスメント(パワハラ)
・モラルハラスメント(モラハラ)
・ラブハラスメント(ラブハラ)
・レイシャルハラスメント(レイハラ)
・ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
・ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
「自分は大丈夫」と思っていても、知識不足だと被害者にも加害者にもなる可能性が高まります。被害者、そして加害者にならないように、以下の記事をぜひチェックしてみてください。
関連【ハラスメント大全2022】職場で起こる40種類のハラスメント一覧職場環境の悩みで辛いなら退職代行の利用も検討してみよう
職場環境の悩みに耐えられず会社を辞めたいと思っても「周りに迷惑がかかる」と辞められない人も多いでしょう。そんな人には退職代行がおすすめ。あなたの代わりに会社に退職の意思を伝えてくれるので、気まずい思いをせずにすみます。
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