最近「自己受容」という言葉を聞くことはありませんか。「自己受容」とは、簡単にいうと「ありのままの自分を受け入れること」です。
「ありのままの自分」といえば、映画「アナと雪の女王」でエルサが歌う「Let It Go」があまりにも有名。エルサも自分が持つ力に葛藤しているように「ありのままの自分」を受け入れることは、簡単そうに思えて実は難しいことなんですね。
ここでは「自己受容」について理解を深め、自己受容が大切な理由、そして自己受容できるようになる方法を紹介します。
目次
自己受容とは
まず「自己受容」がどういうものなのか、説明しましょう。
これは「相談員」としての職務経験があり、メンタルケアの知識もある筆者の考え方です。しかし心の動きに関する言葉のため、ある一線で完全に分けられるというものではないということをご理解ください。
似たような言葉の「自己肯定」「自己否定」「自己肯定感」と関係づけながら説明していきます。
定義は次のとおり。
「自己受容」
自分の良い部分だけでなく、嫌な部分も含めて受け入れること
「自己肯定」
自分を肯定している状態、自分を肯定する行為
「自己否定」
自分を否定している状態、自分を否定する行為
「自己肯定感」
自己肯定していると意識している時の感情
自己受容とはどんな状態なのか、例を交えて紹介していきます。
片足ずつ別の箱に足を乗せて立っている人を思い浮かべてください。左右の箱はそれぞれ「自己肯定」と「自己否定」。
自分を肯定する気持ちが強いと、「自己肯定」の箱は丈夫なものになっていきます。反対に自分を否定しがちになると「自己否定」の箱の方が丈夫になっていくのです。
自分がどういう箱に足を乗せているのかわかっていることが「自己受容」。定義で説明した通り、自己否定の箱が丈夫でも「自分にはネガティブな部分もある」とわかっていれば、それは「自己受容できている」と言えます。
最近よく注目される「自己肯定感」は自己受容があって成り立つもの。この左右違う箱に足を乗せて立っている時の居心地を表すものが「自己肯定感」です。「自己肯定」「自己否定」のバランスが取れていると、立っている人はとても居心地が良いですね。それが「自己肯定感が高い」ということなのです。
例えば「自己肯定」が使い古した段ボール箱、「自己否定」が木箱の場合、その上に立っている人はどんな気持ちになるでしょう。段ボールの箱が不安で木箱の方に両足乗せてしまいたくなるかもしれません。
しかしそこで「段ボールだけれど、確かに足を乗せることはできている」と自分の状態を把握し、自分の状態を「これで良し」と肯定してみます。すると不安はなくなり、箱に乗っている居心地が良くなります。つまり「自己肯定感」を高めることができたのです。
「自己受容」は「自己肯定感」の土台であると言われるのは、このような関係にあるからなのです。居心地良く箱に乗っていれば、多少の障害があっても踏ん張って耐えることもできるでしょう。そのためにも自分がどんな箱に足を乗せているのか、を正しく認識することが大切です。
自己受容が大切な理由
「自己受容」ができていると次のようなことが期待できます。
・異なる価値観も受け入れられる
・大切なこと/必要なことが目に留まるようになる
・なりたい自分に近づける
このような効果があると、自分にどんどん自信を持つことができるので、業績アップも期待でき、人間関係も悩むことなく、充実した毎日になるでしょう。
異なる価値観も受け入れられる
自分のネガティブな部分も認めて、それを悲観することなく受け入れるという自己受容ができていると、異なる価値観も受け入れられます。納得がいかないことに対しても「どんな状態でも受け入れる」と考えられるのです。
そのような人は職場では良好な人間関係を築くことができ、トラブルがあっても、周囲の人からの協力で乗り越えていけるでしょう。
関連自己肯定感が低い人みんなが試し始めた7つの習慣とは?自己肯定感の高め方大切なこと/必要なことが目に留まるようになる
自己受容によって自分の状態がわかっていると、今の自分にとって大切なこと、必要なことがわかりやすくなります。すると、意識しなくても今の自分にとって大切なことに関連することや、必要なことに目がとまるようになるのです。これを「引き寄せの効果」と言います。
人間の脳には「目から取り込んだ情報の中から、特に重要だと思う情報だけをより分けるフィルターの役割」があると言われています。自分の状態がわかるだけで、普段見慣れた職場の風景や街並みの光景から、探し求めていたものが見つかりやすくなるのです。余計な情報に惑わされることがなくなるでしょう。
なりたい自分に近づける
「なりたい自分になるための思い込みづくり」のことをアファメーションと言います。自己受容ができていると「自分はきっとなりたい自分に近づける」「今の私にはこれが必要だ」と、アファメーションが素直に心に響くため、より高い効果が期待できます。
例えば毎朝出勤前に「私は誰とでも良い関係を築くことができる」と言うようにすることで、少しずつ上司や先輩にも緊張することなく自分の意見が言えるようになっていくでしょう。
自己受容できるようになる方法
自己受容を今まで意識していなかった人にとってはなんだか難しいことのように感じますが、自己受容は意識すれば誰でもできるようになります。紹介する自分と向き合えるようになる方法を試して、自己受容できるようになりましょう。
Step.1インナーペアレントを認識する
ありのままの自分を受け入れて、成功を引き寄せようとしているのにインナーペアレントがその邪魔になってしまうことがあります。
インナーペアレントとは、あなたの中にある声のこと。それは子どもを心配する親のように、あなたの新しい挑戦を心配する声です。インナーペアレントの声をいつまでもそのまま聞いていると、あなた自身の自己否定が強まり、自己受容ができません。まず最初はインナーペアレントの存在に気づくことが、自己受容のファーストステップになります。
例えば、転職や起業など何か新しいチャレンジをしようと思い立った時。「うまくいかないかもしれない」「わざわざ変化を求めなくてもいいのではないか」というチャレンジを批判する声が心に聞こえてくるでしょう。それはチャレンジにより起こるかもしれない危険を回避しようとするインナーペアレントの声なのです。
この声はあなたの幼少期に言われて印象に残っている両親の言動や考え方、価値観であり、あなたは無意識に両親からそれを受け継いでいます。自己受容への第一歩として、「どんなインナーペアレントの声が聞こえてくるか」に耳をすませましょう。
Step.2自分の感情に向き合う
インナーペアレントの否定的な声に気づくことができたら、次はその声をできるだけ聞かずに自分の感情に向き合うようにします。
例えば、スケジュールを勘違いして書類が間に合わず上司に厳しく怒られてしまった場面。インナーペアレントは批判的な言葉を言うでしょう。
「まったくダメな人間だ」
「社会人として失格だ」
しかし、その声は無視して自分の感情に集中するようにするのです。
「怒られてしまってショック」
「辛い」
一度自分の感情に向き合って「自分は辛いんだ」と思うことで、冷静に「ミスをして怒られた自分」を受け入れることができます。必要以上に自己否定することを避ける効果があるのです。
そのあとで同じことを繰り返さない対策を考えるようにしましょう。
Step.3自分の感情を書き出す
自分の辛い感情に向き合うことが難しいときは、紙に書き出すようにしましょう。「出来事」「そのときの自分の感情」を書き出しておきます。できれば否定的な「インナーペアレントの声」も書くと良いですね。
出来事:スケジュールを勘違いして書類が間に合わなかった。上司に怒られた。
感情:怒られてショック。辛い。
インナーペアレント:きちんと確認すればよかったのに。社会人として失格。
このように箇条書きにすると書きやすいでしょう。書き出すことで自分の感情と向き合いやすくなることもあります。気持ちが収まらずすぐに書く気になれないときには時間をおいてからでも構いません。
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Step.4リフレーミングをしてみる
リフレーミングとは、「物事を違う見方で捉えて気分や感情をコントロールする方法」のこと。自分で書き出した「インナーペアレントの声」を違う見方で書き直してみましょう。
スケジュールを勘違いして失敗した自分に対するインナーペアレントの声を
「きちんと確認しないからダメなんだ」
↓
「いろいろな業務に目を向けて仕事をして頑張っている」
と書き直してみましょう。怒られた自分を受け入れた後だからこそ、自己否定することなく、冷静に失敗の対策を考えられるでしょう。
まとめ
自分の最高の理解者を作る「自己受容」。「自己肯定感」を高め、充実した日々を送るためにはとても大切なことです。すぐにできることではないかもしれませんが、少しずつ心がけてみましょう。
「ありのままの自分」で胸を張っていきましょう。