「マインドセット」の言葉を知っていますか。
「聞いたことはあるけれどよくわからない」
「成功する人のマインドセットが何とか…」
このように大切なもののように思えるけれど意味まで把握していない人は多いのではないでしょうか。
この記事では、マインドセットの提唱者の1人であるキャロル・S・ドゥエック教授の理論を元にメンタルケアの知識もある筆者がマインドセットの意味と重要性を詳しく解説。
ビジネスに役立つマインドセットを身につける方法も紹介します。
「仕事の成果があがらない」
「コミュニケーションがうまくとれない」
「やりがいを感じられない」
このような悩みを抱えている人は、マインドセットを意識することで解決策が見出せるかもしれません。
目次
マインドセットとは
マインドセットとはその人の思考パターン、考え方のくせのこと。
心を意味するマインド(mind)と姿勢や様子を意味するセット(set)から成り立つ言葉です。人の心は一面ではなく、様々な面を持っていることからマインドのセット、マインドセットと言われています。
マインドセットを意識すれば、難しい局面に遭遇しても楽しめるように。逆に、スキルや知識が豊富でもマインドセット次第で仕事ができない人になってしまう可能性もあります。
マインドセットは個人的にも企業としても成果を上げるためには意識すべき要素なのです。
個人のマインドセットと組織のマインドセットの違い
マインドセットは個人だけでなく組織にもあるもの。企業理念や運営方針といった組織のマインドセットを共通理解にすることで、団結して利益を追求できます。
ビジネスにおいては個人のマインドセットと組織のマインドセット、共に影響し合うため、両方とも意識する必要があるでしょう。
・個人のマインドセット
個人のマインドセットとは、その人自身の持つ考え方のくせ、思考パターンのこと。
最初は生まれた頃からずっと一緒にいる大人のマインドセットをそのまま受け入れますが、家庭環境や成長段階における環境、さまざまな体験によってマインドセットは変化していきます。
生まれも育った環境も全く同じ人などいないので、全く同じマインドセットの人がいないのは当たり前です。
・組織のマインドセット
組織のマインドセットは、例えば会社であれば企業の理念、社風や運営方針にあたります。
組織のマインドセットは以下の3つの要素でマインドセットは定まっていきます。
・取り扱う製品の特性、事業特性
・戦略、企業理念
・組織の歴史
また社内のコミュニケーションによって徐々に作り上げられる一面もあるため、社員個人のマインドセットが組織のマインドセットに影響を与える可能性もあるでしょう。
マインドセットの種類
マインドセットの提唱者の1人、キャロル・S・ドゥエック教授によると、マインドセットには2種類あるとされています。
・固定のマインドセット
・成長のマインドセット
それぞれについて詳しく説明していきましょう。
固定のマインドセット(Fixed Mindset)
固定のマインドセットとは「自分の能力は成長せず、固定してしまっている」と思い込む心の状態。前向きな姿勢はなく、他人よりできない自分になることを恐れ、失敗を避けるタイプです。
多くの人は固定のマインドセットを持っていると考えられます。その根本にあるのが小さい頃から受けてきた教育。
・テストで満点をとって「すごい!」と褒められた
・陸上大会で優勝した人がみんなの前で表彰された
・「才能がある」と言われる人が周囲にいた
このように結果に対して称賛を受ける場面を多く経験すると「結果が全て」という価値観が出来上がっていきます。しかもその結果は努力ではなく生まれ持った能力によるものと信じるように。これが固定のマインドセットの始まりです。
「結果を出さないとダメ」
「周囲の評価が大切」
「失敗は許されない」
仕事をしてもこのような思い込みがあるために、厄介な仕事を後回しにしたり責任から逃れたりするようになります。
難しい局面になると、自分の能力の範囲以上のことをしようとはしないので乗り越えられません。ビジネスマンとして成長の機会を見逃す結果になってしまうのです。
成長のマインドセット(Growth Mindset)
成長のマインドセットは、「自分の能力は開発して高めていくことができる」と考える心の状態。挑戦することで新しい能力を身につけられると信じているので、難しい課題は大歓迎。
ミスや失敗も恐れず挑戦し続ければ将来的には必ず成功すると考えています。
小さい頃から成長のマインドセットを身につけている人もいるでしょう。学生の頃、難しい問題でもクイズに挑戦するかのように楽しそうに取り組んでいた人はこのタイプです。
ビジネスでは、例えば顧客のニーズに合わせて策を練らなければならない、と難しい課題に直面する場面は少なくありません。
「きっと何か解決策があるはず」
「やってみないと分からない」
成長のマインドセットがあればこのように考えることができ、途中で投げ出すことなく対応策にたどり着けるでしょう。
マインドセットの重要性
なぜマインドセットが重要視されているのでしょうか。
マインドセットは思考のくせとも言われるほど、自覚しづらいものでほとんどの人が意識していません。マインドセットに気がつかないために、スキルや知識を身につけてもそれを効果的に発揮できないこともあるのです。
しかし、マインドセットは仕事で成果を上げるうえで重要な役割を担っています。
特に個人としても組織としてもビジネスに有利なのは成長のマインドセット。成長のマインドセットの重要性をさらに具体的にみていきましょう。
目標を達成しやすくなる
成長のマインドセットにより継続的な努力で「必ず達成できる」と信じているので、途中で逃げることも投げ出すこともありません。目標達成率は自然と上がります。
難しく思える目標でも、周りに協力を仰いだり、やり方を工夫したりと努力を惜しまないので達成できる可能性が大きくなるのです。
レジリエンスが高まる
レジリエンスとは「ストレスに負けずに跳ね返して回復できる力」のこと。
辛いことや高い壁にぶち当たってストレスがかかっても、成長のマインドセットがある人は「ストレスがかかっても自分はやれる」と信じることができます。
ストレスに過剰に反応せずストレスと共存することで、ストレスを大きな害に変化させることなく対処できるのです。
チャレンジ精神が旺盛になる
成長のマインドセットの強みは失敗を恐れず挑戦できること。新しいことや難しそうなことに挑戦するのは誰もが不安になりますよね。
しかし成長のマインドセットなら「失敗しても挑戦することで成長できる」と考えられるのです。例え困難な状況に陥ってもそこから学び、諦めず何度も挑戦できます。
何事にも果敢に挑戦することで、新しい道が開け、ビジネスチャンスも自分の世界も広がっていくでしょう。
成長のマインドセットに変える方法
ビジネスに有効な成長のマインドセットを身につける方法を紹介します。
Step1.マインドセットの存在を知る
マインドセットを意識することから始めましょう。自分のマインドセットについては自覚しづらいものですが、他人のマインドセットは意外とわかるもの。
周囲の人の発言に耳を傾けて「成長のマインドセット」「固定のマインドセット」どちらに基づいているか、判定してみましょう。
【固定のマインドセットに基づいた発言の特徴】
「もっと早く言ってくれたらよかった」
「今は別の業務を任されているので、それは引き受けられません」
「あの人がうまくいったのは運が良かったから」
・失敗を他人のせいにしている
・努力しようとしない
・自分にはできないとすぐに諦める
・難しい仕事から逃げる
・他人をねたむ
【成長のマインドセットに基づいた発言の特徴】
「どこがよくなかったのか、もう一度考えてみよう」
「やったことありませんが、やってみます」
「この部分が分からないのですが、教えてもらえますか」
・失敗を素直に認める
・何でもやってみようとする
・分からないことを臆せず質問する
・改善策を見出そうとしている
固定のマインドセットに基づいた発言だからといって、その人を非難するのはNG。マインドセットは状況に応じて変化するもので、その発言がその人の人格を決定づけるものでは決してありません。
固定のマインドセット=悪とせず、発言の背景を理解するように努めましょう。
マインドセットの存在を知るには、マインドセットを提唱したキャロル・S・ドゥエック教授の著書『マインドセット「やればできる! 」の研究』を読むのもおすすめ。
著名人を例にとり「成長のマインドセット」と「固定のマインドセット」がわかりやすく説明されています。
自分や他人の行動がどちらのマインドセットに当てはまるか、を自然と考え、マインドセットに対する意識が高まるでしょう。
Step2.自分のマインドセットを理解する
周囲の人を観察し、マインドセットに十分意識が向いたところで、次は自分の発言を振り返ってみましょう。頭に浮かんだ考えや実際に行った発言をもう一人の自分が判定します。
まず、直前の思考や発言を頭の中で判定してみましょう。
例えば・・・上司に頼まれていた資料が作り直しになった時
・やり直しになったのは「上司がきちんと説明してくれなかったから」と思った
→固定のマインドセット
・「ここが分からなかったので、もう一度教えていただけますでしょうか。」
→成長のマインドセット
仕事が忙しく、気持ちに余裕がない時はその都度判定しなくてもOK。仕事終わりの帰り道や休日に特に記憶に残っている思考や発言に対して考えてみましょう。
固定のマインドセットになっていることに気づいても「ダメだ」と自己否定しないよう心がけてください。ここでは自分のマインドセットのありのままに気づくことがポイントです。
「ダメだ」と否定してしまうとマインドセットのコントロールが難しくなってしまいます。
Step3.成長のマインドセットを身につける
仕事に役立つように、固定のマインドセットを成長のマインドセットに変えていきましょう。固定のマインドセットは長い年月を経て身につけたものなので、すぐに変わるものではありません。少しずつ変わっていくものと心に留めておきましょう。
ここでは変えていく方法を4つ紹介します。
・成功体験を書き出す
成功体験を書きだすことで「努力したら成果が上がる」と実感できるため、成長のマインドセットが身についていきます。ノートやスマホのメモアプリを使って可視化しましょう。
・始めはできなかったけれど最近できるようになったこと
・絶対にできないと思っていたことが実はできた
このようなことをまずは10個ずつ書き出してみます。自分にも必ず身につけられる能力があると信じられるはずです。
・アファメーションを活用する
アファメーションとは「言葉による思い込みづくり」。自分で肯定的な事を言ったり、書いた言葉を見たり、聞いたりすることで成長のマインドセットが身についていきます。
・「失敗するかも」と思ったらすぐに「大丈夫!」とつぶやく
・朝「今日も楽しもう!」と言ってから家を出る
前向きになる言葉であれば、何でも構いません。自分の言葉で自分に「何でもできる」と思い込ませましょう。
・成長のマインドセットの人と行動を共にする
周囲にいる成長のマインドセットの人と一緒にいる時間を長くしてみましょう。その人のそばにいるだけで自分も同じような気分になり、自分に成長のマインドセットがあると思えます。
また成長のマインドセットの人の言動を観察することで脳内のミラーニューロンが働くため、いつの間にか成長のマインドセットが身についていくのです。
・素直になる
成長のマインドセットには素直さも必要です。失敗やミスをした時はごまかしたり言い訳したりせず、素直に認めて謝りましょう。失敗を成功へのチャンスに変えるためにはまず失敗を受け止める必要があります。
固定のマインドセットがあるうちは、なかなか受け止められないので、そういう時は「今、自分は固定のマインドセットになっている」と意識してみましょう。
否定せずただそう思うだけでOK。ありのままに受け止める行動が習慣になれば、失敗も素直に受け入れられるようになっていきます。
まとめ
マインドセットは無意識。個人のマインドセットには「価値観」「信念」も含まれているので、その人の善悪の判断基準になっているかもしれません。
生まれてから無意識に育ってきたマインドセットはいくら変えられると言っても簡単なことではないはず。急いで変えようとすると心に無理がかかって大きなストレスになってしまう可能性もあります。
まずは今のあなたのマインドセットを意識することから始めましょう。固定のマインドセットもOK、成長のマインドセットもOKです。
あなたの理想のマインドセットを意識するだけで、緩やかに心は変化していくものです。自分と他人と組織のマインドセットを意識してみましょう。