予期せぬ変化でキャリアプランが崩壊する「キャリアショック」が、私たちの将来を脅かしています。
「働き方改革」による残業禁止で収入が減り住宅ローンが払えなくなる。定年が早まり転職するも社外で通用せず大幅な収入減など。
しかし過酷な状況にこそ、「自分の可能性を広げる」チャンスは眠っています。現代を生き抜く上で、知っておきたい「キャリアショック」をチェックしておきましょう。
目次
キャリアショックとは
「キャリアショック」とは、社会・環境の変化によって描いてきたプラン・積み上げてきたキャリアが予期せずに崩れること。
一言でいうと、キャリアショックは上記の意味を持ちます。
慶應義塾大学大学院特任教授の高橋俊介氏が、著書「キャリアショックーどうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?」で定義しました。
「これまで」「現在」働き方の違い
では実際に今までと現在では、働き方にどんな違いがあるのでしょう。比べてみました。
これまでの働き方:
「入社すれば定年の40年後まで道が用意されている」
現在の働き方:
「会社に入っても、どんな道を歩むかは自分次第」
多くの人は「これまでの働き方」を想定して自分の将来を描いてきました。そのため、「現在の働き方」に変わりつつある世の中から打撃を受けているのです。
今までは終身雇用制度が機能しており、入社したら定年まで勤務。年収もライフステージに伴い負担がピークになる50代に向けて収入が上がるように設定されています。
現在は入社して定年までいられるかは自分次第。年功序列も徐々に薄れ、長く働いてれば地位が上がるとは限りません。
その代わり転職がしやすくなりましたが、AIの台頭により自分の職業がAIに代替されるか否かも配慮する必要があるのです。
このように、私たちは変化の激しい時代を生きています。
現代社会の主な変化
キャリアショックをより深く理解するため、現代社会に起きている変化をまとめてみました。
働き方改革
伝統的な働き方を変える大きな動きが政府の「働き方改革」。生産性アップ・人手不足解消を狙って残業時間削減・副業推進などさまざまな改革を行っています。
残業が「当たり前」とされていた日本企業さえも、社をあげて大幅な残業時間削減を実施中です。
終身雇用の終わり
「終身雇用の維持は難しい」と経団連会長・トヨタ社長が発言したことは大きな話題になりました。海外の働き方の影響もあり、「年功序列」を見直す考えも出てきています。
ますます40・50代以上の会社での地位が危うくなっているのです。
転職ブーム
一方転職はしやすくなり、3年以内の離職率は31.8%。(平成27年度3月大学卒業者)
参考データ:厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況
その分、会社側は「新卒かどうか」を重視していないとも言えるでしょう。
「働き方改革」「終身雇用の終わり」「転職ブーム」に付け加え、加齢・社会変容と共に生きているとプライベートにも変化が起こります。
「親の介護」「子どもの教育」「独身者数増加による孤独死」なども描いていたプランが崩れる原因にもなるでしょう。
キャリアショックの具体例
キャリアショックとは、「社会の変化によって描いてきたキャリア像が崩れる」こと。
具体例を元に、実際どんなキャリアショックが起きているのか見てみましょう。
参考資料:【序章】働き方改革で年収減か。「キャリアショック」時代が来る
残業代減で住宅売却、家族と離れて孤独死の恐怖
ある40代の男性は、母・姉と買った家で暮らすプランが「働き方改革」の影響で崩れてしまいました。
3人で住宅ローンを分担して払っていましたが、働き方改革による残業削減で、残業分の収入月6万円が減ってしまったそう。
それに加えて母親が認知症に。医療・介護費を負担する姉が住宅ローンを払えなくなり、この男性が負担する住宅ローンは月21万円にもなってしまいました。
給料だけでは生活費・住宅ローン両方を払えなくなり、家を売却。その後は母・姉と別々に暮らし、今恐れているのは孤独死だと言います。
再開発によりマンション売れず、親へ1000万の借金
残業代が入る前提の資金計画でマンションを購入した男性は、「働き方改革」によりその計画が崩壊。
「40歳以上は家賃補助打ち切り」を言い渡された男性は、マンションを購入し家族4人で暮らしていました。
しかし残業が当たり前であった彼の会社でも、働き方改革の影響により残業制限。月70万円あった収入は40万円になり、住宅ローンは収入の約半分22万円を払わなければいけませんでした。
住宅ローンを滞納してしまい、届いた催促状には残りのローン7000万円に年14%の遅延損害金が追加で記されていたそう。
マンションは都心に近いが再開発の影響で売値を下げないといけなくなり、足りない返済額は親に1000万円を借りての支払い。
「どんなことが起こっても返せる額でないと借りてはいけない」と感じたそうです。
突然の役職定年、転職するも収入減
54歳の男性は予期していなかった役職定年を言い渡され、転職ブームに乗っかるも結局収入は減ってしまったそう。
組織の新陳代謝を上げるための役職定年ですが、50代以上の男性にとっては深刻な問題です。
役職定年・転職のどちらにしても給料は約10万円下がってしまい、住宅ローンが払えずに家を売却。さらに1000万円の借金も残り、高校生の娘もアルバイトをして一緒に返していくと言います。
近年は転職ブームも起こっているので、「自分なら転職した方が給料が上がるのでは」と思っていたそうです。
キャリアショックを防ぐためにするべきこと
キャリアショックのリアルな例を聞いて、「私にもどんな未来が待っているのかわからない」と戦慄してしまった方も多いかもしれません。
しかし、この状況は大きなチャンスです。なぜなら、会社だけにとどまらずに、自分の可能性に挑戦・発揮できるから。
決められた道だけを進まなくていいので、「自分の人生を歩んでいる」感覚になれるでしょう。
キャリアショックが起こる現代の状況を利用するために以下の2点を心に留めておきましょう。
・「キャリア」の意味を理解する
・副業で稼げるようになる
「キャリア」の意味を理解しよう
「キャリア」の意味を理解せずに使っている人も多いのではないでしょうか。
「キャリアは、働くことに対するその人の意志の流れであり、獲得したもの・表現したものの蓄積」です。
どんな経験・成果・価値観もキャリアの一部になることを踏まえて社外でも活動すると、一つの会社だけを信頼しなくなるでしょう。
具体例のような、「収入を残業代に頼る」「社外で通用するスキルがなくて転職がうまくいかない」こともなくなるはず。
最近では「スラッシュキャリア」という複数のスキル・経歴を積み重ねるキャリアの築き方が話題。合わせてチェックしてみましょう。
副業で稼げるようになろう
「キャリアショック」を防ぐために、副業を行うメリットを3つ紹介します。
副業が上手くいけば残業が削減された分の収入を稼げますし、「自分で稼ぐ力」がつけば1つの会社に頼らなくてもよくなります。
高収入の副業ほどすぐには成果が出にくいので、今のうちに始めてみましょう。
収入が得られる
副業の収入で今までの残業代を埋められる上、他にも収入源があれば「会社にいつ切られるかわからない」現代社会でも不安が少なくなるでしょう。
自分で稼ぐ力がつく
副業では「何を求められているか」「どうしたら成果を上げられるか」の責任は全て自分。それを乗り越えて副業でも収入が確立すれば、自分で稼ぐ力が身につきます。
「会社に頼らないでも生きていける」と自信にも繋がり、本業・副業でも良い影響が出るでしょう。アピールできるスキル・実績があれば、転職もしやすいかもしれません。
定年後の居場所になる
「役職定年」を言い渡されることも多い世の中。無事に定年ができても、今まで頑張ってきた仕事がなくなれば「どうしていいかわからない」と路頭に迷う人も多いでしょう。
そんな時に副業は「居場所」や「生きがい」にもなります。
本業ではできなかった「好きなことで稼ぐ」に挑戦してみる時かもしれません。
まとめ
話題の「キャリアショック」をまとめました。
なにを頼りにして生きていけばいいかわからない世の中ですが、自分のことを信じられるようなキャリアを築いていきましょう。