守破離(しゅ・は・り)とは、ものごとを学ぶ基本的な姿勢、または取り組む順序を意味します。もともと武道や茶道で用いられ、その後、学ぶ場ならどこでも、汎用的に使われるようになりました。
型を身に付ける第一段階「守」、型を応用・改良する第二段階「破」、型から独立する第三段階「離」。それぞれの段階を仕事に置き換えると、どんな状況が当てはまるのでしょうか?
守破離の具体的な事例、心掛けるべきこと、取り組むメリットをまとめてみました。自分はいま、どこの段階にいるのかを自覚し、次の段階にいくためには何を意識したら良いのかを学びましょう。
目次
守破離とは?意味・解釈
守破離の一般的な意味・解釈をまとめてみました。最初に確認しておきましょう。
『守』 (しゅ)
師の教えを忠実に学び、その後の土台となる”基礎・基本”を固める。
『破』 (は)
鍛錬と経験を重ね、土台を守りつつも応用・改善をし、”自己流”を加えていく。
『離』 (り)
それまでの過程に一切とらわれず、”思うがままの境地”に達する。
『守』の段階で、目指すのは「優秀者」
『破』の段階で、目指すのは「変革者」
『離』の段階で、目指すのは「創造者」
何か新しいことを学び始めるときは、基本的に『守』→『破』→『離』のステップで成長していきます。
各段階ごとには、目指すの姿も異なっており、『守』で目指すのは、しっかりとこなせる「優秀者」。『破』で目指すのは、既存の枠を破っていく「変革者」。最後の『離』で目指すのは、新しい枠を生み出す「創造者」です。
仕事における守破離の事例
仕事における守破離の具体的な事例、シチュエーションを挙げてみました。
『守』 (仕事における)
上司、先輩社員から実務の基礎を学ぶ。また、真似をする。守を重ねると、教える側に回る。また、責任をもらい、任せられる機会が増える。周りの社員からは、大きな信頼を得ている。「自立」状態と言える。(研修~)
『破』 (仕事における)
守で得た基礎は、無意識にこなせる。独自の考えを持ち、チーム視点・組織視点での改善提案を出す。そして、実行まで移せる。「自律」状態と言える。周りの社員からは一目置かれている。(ベテランの域)
『離』 (仕事における)
それまでの過程に一切とらわれず、”思うがままの境地”に達する。完全なるオリジナリティが発揮され、他社員を唸らせる独走的なアイデアを生み、それをもとに動いている。
どのような仕事であっても守破離を意識することは大切です。
これまでやったことがない新しい仕事を任されたときは、ベテラン社員でも守から入らざるを得ません。誰もが最初は守を通ることを覚えておきましょう。
守破離が大事な理由
「古い」と思われそうな守破離ですが、なぜビジネスにおいてここまで大事にされているのでしょうか。
真似ることで学べる
「学ぶ」の語源は真似ると同じ。語源の通り、「真似る」は学ぶために大事な工程です。
まずはこれまでのやり方・考え方を真似ることが、成長への一歩と言えるでしょう。
オリジナリティを出せるようになる
「これまでのやり方を学ぶより、新しいことしたい!その方が早い!」と思ってはいませんか?全くのオリジナリティはあり得ません。「自分だけのアイデアだ」と思うことでも、それはこれまで自分が見聞きしたものの集大成なのです。
だからこそたくさん「守」を行い、「破」「離」と進んでいくことで、自分にしか生み出せないものを創れるようになるでしょう。
これまでのあなたに起こったひらめきも、これまでのインプットがあったからこそ。引き出しを作る意味でも、「守破離」のプロセスを大事にしていきましょう。
チャンスを逃さない
「これはやりたくない」
「古い考えだ」
「もっと新しいことをしたい」
このように思っていると、学びのチャンスを逃します。反面教師だとしても、何か新たな気づきがあるはず。
「温故知新」という四字熟語がある通り、過去の価値観を知ることで新たなものを生み出せるでしょう。
『守』を続けるコツ
守のコツは、徹底的に真似ることです。真似る相手は以下のような人を選びましょう。
①尊敬できる人
②結果を出している人
③信頼されている人
④憧れる人
「この人のようになりたい!」と思える人を探すことから始めましょう。自己流を出さない守の段階では、誰を参考にするかが非常に大切です。
しかし時には、守を続ける理由がわからなくなってしまうこともあるでしょう。
いつまでやらなければいけないんだ!
もっと良い方法があるはずだ!
気持ちはわかります。やりがいを見出せなくなれば、こう感じてしまうのも無理はありません。しかし、行動を起こさなければ何も変わりません。
じゃあ、どうすれば良いの?
じゃあ、何をしたいの?
この問いにしっかりと答えられるよう準備をしましょう。提案があるならば、資料をつくり提出する。プレゼンをしてみる。上司の納得がいく代替案を考えることが大切です。
『守』から『破』に進む最低条件
守を大事にしなければいけない人かどうかをチェックするために以下のようなリストを用意しました。
挨拶がきちんとできない
メモを取らず何回も同じことを聞く
敬語が使えない
雑用を率先してやらない
ホウレンソウができない
同じ間違いを繰り返す
自分のミスを謝らない
指示を待つだけ
プライド高く知ったかぶり
仕事中に私語が多すぎる
逆ギレをする
優先順位がつけられずパニックになる
好き嫌いで物事を判断し、露骨に態度に表す
上記項目はいわゆる、仕事の基礎・基本と呼ばれることができない人の特徴です。(最悪のフォロワーシップ)
仕事の基礎・基本、その後に待ち受ける全ての仕事の土台となります。
いつまでも『守』の段階にいたくない!
と焦ってしまう人は、自分の基礎・基本をチェックすることから始めましょう。
①意識してもできない
②意識したらできる
③意識してできるが、無意識にはできない
④無意識でもできる
できているかどうかを確かめる際は、上の4段階のどこに位置するかを見極めましょう。無意識にできて初めて、『守』を会得していると判断できます。
『守』から『破』に進むべきでない人の特徴
仕事において、『守』から『破』に進むべきでない人の特徴を挙げてみました。
①上司のやり方は非効率!同じことはしたくないと思うことが多い
②上司が言っていることに納得できないので、無視することがある。聞いているようで、聞いていない
③やりたい仕事と、やりたくない仕事がはっきりと分かれている
④ビジネスマナーは意味がないと思っている。
⑤テレアポや飛び込み営業は絶対嫌だと思っている。
上記5つのどれかに当てはまる方は、仕事の進め方、マナー、基本的なコミュニケーションにおいて、改善すべき箇所があるかもしれません。
『守』から『破』に進む方法
『守』から『破』に進むためには、まず基礎・基本を叩き込む必要があります。
①フォロワーシップを学ぶ
②EQを鍛える
③正しさを確かめる思考を持つ
3つを解説していきます。
フォロワーシップを学ぶ
仕事における意義や役割を理解するためには、フォロワーシップを学びましょう。
①意見・アイデアを積極的に伝える
②雑務でもきちんとこなす
③報連相を怠らない
④上司が完璧でないことを理解している
⑤上司の最終決定を支持する
⑥前向きな姿勢を貫く
⑦チームの未来を考えている
7つの行動が取れるフォロワーになることを目指すのが先決です。
関連②EQを鍛える
コミュニケーションを改善するためには、「EQ」を鍛えるのが効果的です。EQとは、”自分と他者の感情を正しく認識し、適切なコントロールができる能力”であり、且つ、それを踏まえて”適切に表現できる能力”です。
・相手の良い部分を認める
・1日の行動と感情を書き出す
・嘘をつかない
・感謝したことを思い出す
上記を含む全部で7個の”EQを鍛える方法”を解説した以下の関連記事をご覧ください。
関連③行動して確かめる姿勢を持つ
適切な判断をするためには、経験を積むしかありません。経験は行動によってしか得られません。
間違ってそう
面倒くさそう
効率的なじゃなさそう
簡単そう
難しそう
事実を確認することなく、思い込みだけで『守』を否定していませんか?
関連思い込みをなくす最短ルート|明日試せる”自分らしさ”奪還のコツ・自滅癖の克服方法 関連思い込みが仕事の失敗・ミスを生む真の原因は?ケアレスミス改善対策また、個人的な嗜好を入れ過ぎている人もいます。
やりたくない
嫌い
向いていない
こういった決めつけが過剰な場合も、『守』が不要だと思ってしまいます。
何一つ学べない仕事は、一切ありません。まずは、やってみる。そこから気づき・学びを得る姿勢を持ってみると、『守』を徹底することができ、『離』に向かえるはずです。
関連守破離を理解するのは、自分の現在地を確かめるため
守破離を理解していると、自分がいま、3段階のうちどこにいるのかを確かめることができます。
現在地がわかると、いまの自分に必要なことがわかるでしょう。また、そのためには、周りの人を守破離で分類してみるのもおすすめです。
・まだまだ守を大事にすべきだな。
・破に進むためには、何が必要だろうか?
・この仕事での守は、何を会得する必要があるだろうか?
・あの人は破に入っているな。なぜだろう?
・あの人は守がないから、失敗しそうだな。
・誰も真似できないあの人は離を実践してそうだ?
次のステージに進むために、守破離の概念上手に活用して考えてみましょう。